来世の話









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「愁焔のシリアス」









デュラスとの戦いに終止符が打たれ、そして今の生が終われば永きに渡った輪廻の輪から晴れて解放されるのだろう。
生まれ変わるたびに戦いを宿命づけられていた魂を幾重にも絡まった鎖から解き放つには、今回は絶好のチャンスなのだ。
けれどその時が訪れたなら、一体どうなるのだろうか。
終わりの見えない戦いの中、パートナーに会えるのを心待ちにして生まれ変わってきたのに、新しい生では会えるのかすら分からない。



「なあ、愁生」
「どうした? 焔椎真。改まって」
「俺達ってさ、デュラスとの戦いが終わったらどうなるんだろうな。デュラスと戦わないなら天白に生まれ変わりの術をかけてもらう必要ないだろ?」
「そうだな」



愁生の部屋のベッドの上にうつ伏せになってゲームをしていた焔椎真は、天井の方へ曲げた脚をぱたぱたと揺らしながら、隣で文庫本を読む愁生に尋ねてきた。
確かに内容自体は愁生自身も前から気になっていた部分だが、あえて今まで口にはしないでいたものだ。
考えても考えても答えなんて出やしないのだから。



「戦いが終わればツヴァイルトとしての使命も自動的に終わるんだから、おれ達も普通の人間達みたいに記憶をもたずに生まれてくるんじゃないのか?」
「だよなー。でもそしたら来世ではお前にも会えなくなるってことだよな?」
「……まあ、そうなるな」
「戦いが終わるのは嬉しいけどよ、お前と会えなくなるのは残念だな」
「おれもだ」



戦いは一刻も早く終わってほしい。
でも来世でパートナーに会えなくなるのは嫌だ。
相反する願いに答えはやっぱり出なくて、結局はその時が来てみなければどうしようもないのだ。



「絶対来世で愁生に会える、なんて保証はないもんな」
「まあ、な」
「でもさ、記憶がない中でまた出会えたらすごいよな。それでまた好き合えたらもっとすごい」
「ああ、そうだな。あくまで来世の自分達としてだろ」
「そうそう!」



そうなればきっとすごい。
それこそ記憶も何もなくても魂が惹かれ合ってるんだと確信できるから。
ただ、記憶がないから自覚することはできないが。



「会えたらいいよな」
「……」
「……ん? 俺とまた会うのは嫌か?」
「馬鹿だな。そんなわけないだろ。お前以上にまた会えたらいいなって思ってるんだ、おれは」
「そっか」





いつか会えたらいい。


来世でも同じ時に生まれることができたなら。


その時は……。




――また恋でもしようか。











2010/9/27

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