強引な幼なじみ









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「愁生♀化」








焔椎真にとって一つ年上の愁生は自慢の幼なじみだ。
艶やかでさらさらの髪。
切れ長の瞳に、目の周りを縁取る長い睫毛。
頭が良くて運動もできて、友達もたくさんいる。
しかも、おせっかいとも言えるほどに面倒見だって良い。
焔椎真が何かやらかしても愁生はいつもの涼しい顔で後始末をするし、そのことで偉ぶることもなく、お礼を言っても何故お礼を言われたのか分からずにいるほどだ。
彼女は焔椎真が今まで出会った誰よりも綺麗で、本当に自慢の幼なじみなのだ。





「焔椎真」
「何だ?」

時にここは二人が住んでいるマンション。
愁生が高校二年で、焔椎真は今年高校生になったばかり。
親との折り合いが悪い焔椎真が中学校卒業とともに一人暮らしすることを望んでいて、同じく親との折り合いが悪かった愁生が乗っかる形で二人で暮らし始めた。
昔から彼女は一番傍にいた存在だから、今更焔椎真も離れたいだなんて全く思っていなかったし、単純に一緒に暮らせるのは嬉しかった。
その愁生が何やら焔椎真を呼んでいる。


「焔椎真、お前告白されたって本当か?」
「うわっ。どこで聞いたんだよ、その話」
「女子の間でけっこうな噂になってた」
「だってそれ、今日の話だぞ。女子ってのは怖いな」


話の広がりの早さに焔椎真は多少うんざりしていたら、愁生が焔椎真の目の前に座り込んだ。

「で、返事は?」
「断ったに決まってんだろ! 付き合うとか、俺、あんまよく分かんねーしさ。そんな余裕もねえよ。……って噂が広がってたなら断ったって知ってるだろ」
「まあね。ただお前の口から聞きたかっただけだから」

悪びれるでもない愁生に「ちゃんと断ったよ」ともう一度告げれば、にっこりと彼女は妖しい笑みを浮かべた。

「?」

今の話の中に愁生が笑うような要素が見つからず疑問に思っていれば、ひどく綺麗な笑みで焔椎真の首に愁生は腕を回し抱きついてきた。

「しゅ、愁生!?」
「何だ?」
「む、胸があ、当たってる……、んだけど……」
「そうか?」

まるで何でもないことのように言ってのける愁生だが、焔椎真には大問題だ。
確かに普段からスキンシップが激しい部分もあるかもしれないけど、幼い頃とは違うし愁生は女なんだから過剰すぎるのは控えていたのに。

「あの……な、愁生? 離れてくれないか?」
「なんで?」
「その、だってな……、胸……が」

しどろもどろになる焔椎真を尻目に愁生はより腕の力を強め。

「なあ、焔椎真。キスしていいか? いいよな?」
「…………は!?」
「それとも嫌いか?」
「お前を? そんなわけあるかよ!」
「あ、そう。じゃあいいよな」
「へ?」

何が何やら分からず疑問符を浮かべている焔椎真にまた少し顔を寄せると、互いの顔の距離はもう何センチも離れていない。
どちらかが少しでも動けば唇が合わさってしまうというのに、愁生は全く問題ないみたいで焦って動けずにいる焔椎真へ了解もとらず、強引に唇を近づけてきた。


「……ッ!!」


長く感じられる口づけの後、硬直している焔椎真の唇を舌で舐めて愁生は不敵で綺麗に笑った。

「しゅ、愁生……。お、お前っ……」
「ん?」
「き、き……、」
「キス、だろ? じゃあ次はセックスしようか」
「はあ!?」

愁生は焔椎真の着ているシャツのボタンを、その細くて長い指で一つ一つ外していく。

「ちょ、待てって、愁生っ!」
「……誰にもお前は渡さないよ。奪われる前に奪ってやる」
「……え?」


愁生は思った。
焔椎真の良さを知って好きだと告げる人間もいる。
だけど自分から焔椎真を奪おうというなら絶対に阻止してやる。
焔椎真は自分を優しいとか面倒見がいいとか高く評価してくれるが、どれも全部嘘ばかりだ。
焔椎真以外の他人なんか心底どうだっていい。
一緒に暮らしだしたのは焔椎真が心配だったのも確かにあるが、何よりも誰よりも傍にいて、焔椎真とずっとずっと共に生きるということを真実にするため。


「焔椎真、お前は何もしなくていい。任せてくれればいいから」
「愁生……」
「大丈夫。何も心配いらない」

そう言って愁生は瞳を揺らがせている焔椎真の手をきつく掴み、逃げないように自分の膨らんだ胸に押しあてた。



「だからさ、お前を全部ちょうだい。いいよな?」












2010/9/10

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