見せてよ、君のこと ※1万HITリクエスト6。 「やらしい愁焔」 この世の誰よりも愛しい人。 他の何者にも代えがたい、たった一人の人。 ねえ、お前の、その総てを見せて? 可愛い声で啼く様も、快楽を享受して淫らに乱れる様も。 どれも、一つたりとも見逃したりなんてしないから……。 * * * * * 黄昏館に与えられた愁生の部屋のベッドの上、胸までたくし上げた服をそのままに、下着さえ穿いていない焔椎真の下半身へ身体を移動させると、次に何が起こるかを正確に読み取った背中がビクリとしなった。 すでに今夜は一度、焔椎真は愁生のものをナカに受け入れているが、普段からこの行為が一度で終わらないのはどちらもよく知っている。 だから愁生が下半身に目をつけても焔椎真はたいして驚きはしなかった。 「おい……、愁生?!」 「お前のココを舐めたい。舐めさせて?」 「……!」 確かに驚きはしないが、直接的な表現を用いられると恥ずかしさが募るのはどうしようもない。 「焔椎真?」 焔椎真の硬くなったものへ手を這わせて愁生が問い掛けると、敏感な身体は一つ甘い声を洩らし、案の定唸ってしまった。 「で、でも……、そ、そんな場所舐めたって何も……」 何も、だなんてそんなことはない。 愁生にとっては快楽に彩られた焔椎真の艶やかで羞恥に染まる顔を見てるだけでも軽くイキそうになるのだから。 でも自分が愁生をそんなふうにさせているなんて少しも思っていない焔椎真は、眉を寄せてなんとか目の前の相手を思い止まらせようとしている。 「いやでも……」とか、「でもな……」なんて言って。 セックスとか、そこに行き着くまでの恥ずかしいこともこれまで何度かやってきたのに、いつまでも慣れないでいる焔椎真はとても可愛いと愁生は常々思っている。 でも可愛いからこそあらゆる反応を見たいのも事実だ。 今日も焔椎真の無自覚の煽りに当てられ、愁生は自分を抑えるだけの余裕なんて疾うに捨てているのだ。 「焔椎真」 いくら焔椎真といえども軽めの拒絶なんかじゃ痛くも痒くもないし、本気で嫌がってないなら言い分を聞く必要もない。 今かろうじて愁生に残っているのは一握りの理性だけだから早く返事が欲しい。 だから耳元へ意図的に低めの声を出して吐息混じりに囁けば、ぶるりと大きく焔椎真は身体を震わせた。 「お前の乱れる姿が見たいんだ。お前の総てを知りたい。いいよな、焔椎真?」 情欲に濡れた瞳でそっと囁けば恥ずかしさのため、焔椎真は赤らめた顔を逸らした。 それを了承ととり、外気に晒されている焔椎真の緩く勃ち上がった性器を愁生がぴちゃりと音をたてて銜えると、堪らないのか嬌声が零れた。 「ん……、あっ……、しゅう……せ……っ」 強く吸われたりてのひら全体で形を確かめるように弄ばれたり、舌で先端に刺激を与えられて快楽をやり過ごせなくなった焔椎真は、自分とは違って癖がなくさらさらした愁生の髪に手を入れ掻き乱した。 「ん……、ん、はあっ……、しゅ……せ、」 先走りを零す性器を銜えたまま切れ長の瞳だけをそっと上げると、焔椎真の涙で潤んだ双眸とぶつかり合って。 「ッ……!」 情欲の色が増した愁生の強い瞳に見つめられ、イキそうになるのを必死で堪えた。 愁生は今の焔椎真の状態を知ってか知らずかわざとぴちゃぴちゃと淫靡な音を室内に響かせて、張り詰めたものを際限なく責め立てている。 「んあっ……! しゅ……、も…俺……っ、」 汗を流し、髪が顔に張り付いた愁生の色気のある姿に焔椎真は息を呑んだ。 ああ、もう駄目だ、イキそうだから離してくれ、と目でなんとか訴えてみるが全く取り合ってくれず、ベッドの端へ逃げようとする腰を器用に片手で押さえて一心不乱に強く吸われ、先端に勢いよく歯で衝撃を与えられた。 「は、あっ、ああぁあ!」 駄目だ、このままじゃまずいと思った刹那、焔椎真は生理的現象に抗いきれず、あえなく白濁を愁生の咥内に放つことになってしまった。 それをもったいないとばかりにゆっくりと嚥下し、唇の端に残ったものさえも親指で掬い舐めとる。 「う、あ……っ、」 焔椎真は乱れる息を整えるのもそこそこに、口の中に出してしまって申し訳ないという罪悪感と、離してくれと言ったのに離してくれなかった愁生が悪いんだという気持ちが合わさって少しばかり複雑だった。 だけど罪悪感と、出したものを飲まれたという羞恥心の方へ天秤はぐぐっと傾いてしまって。 「お、お前っ……! そんなの汚い……、だろ……」 「焔椎真に汚いところなんて少しもない。それに苦いけどお前のものなら飲めるみたいだな」 まあ、お前以外の人間とこんなことする気も全くないけどな、と言えば頬を染めた焔椎真が枕に顔を埋めて表情が見えなくなった。 愁生の髪は焔椎真が掻き乱したため少し乱れ、双眸は強く光を放っている。 「焔椎真……」 耳元で吐息を込めて名前を呼んだ声は少し掠れていて、それだけで焔椎真の背中は言葉に出せない何が這い上がった気がした。 愁生が枕から顔を上げさせても俯いたままだったので、焔椎真の顎を細く長い指でそっと掬い上げ、再び瞳を交錯させる。 互いに絡めた指から相手の体温が伝わってくる。 それを合図に二人はその夜何度も溶け合った。 総てを見るにはまだまだ足りない。 今度は何をしてみようか、愛しい人。 2010/8/22 |