ハイスクール・ラブ 2










※8万HITリクエスト6
「臨♀静で来神時代の甘エロ」










勉強を教えてくれるというので静雄が屋上を大急ぎで後にしようとしたら、「シズちゃん、早く戻ってきてね〜」とおかずを食べながらの臨也の声が背後から聞こえたので、「分かってるよ」と返してドアを閉めた。
数学を教えてもらう時間が惜しいし臨也からも早い戻りを願われているので教師達から怒られないように、でもできるだけ早足で廊下を行く。
この際ちらちらと見てくる周りなんか無視だ。
クラスへ戻って静雄が机の中から数学の教科書とノートとペンケースを取り出していたら、背後から名前を呼ぶ間延びした声がしたので振り返ったらそこには見知った人物がいた。

「新羅と門田か」
「君が一人で戻ってくるなんてどうしたのさ? 臨也は? まさか喧嘩? 君達が喧嘩すると周りの被害が甚大なんだから早く仲直りしてよ」
「何言ってるんだ。喧嘩なんかしてねえって。俺、次の授業当たるし今から臨也に教えてもらうだけだよ」
「ああ、そうなんだ。それにしても君達毎日幸せそうでいいねえ。僕なんかセルティが学校来れないから毎日毎日退屈でたまんないよ!」
「……また始まったな、新羅のやつ。じゃあ門田、あとは頼む」
「いや、頼まれたくはないんだがな」

はあ、と溜め息を零した門田と延々とセルティの可愛さや魅力、どれだけ自分がセルティを愛してるか等、誰に向かって喋っているのかも分からない話を湯水のごとく垂れ流している新羅を横目で見ながら静雄はクラスを出ていった。
残された門田はといえば新羅の終わりの全く見えないセルティ語りに付き合い切れず、途中からは右から左へと話を綺麗に聞き流していたとか。











「シズちゃんおかえり」
「ただいま。ほら臨也、持ってきたぞ」
「それで数学のどの部分が分からないの?」

屋上まで駆け上がってドアを開ければ、少しばかり減ったお弁当の中から二つ目の卵焼きを頬張っていた臨也が静雄の持ってきた教科書に目を落としている。
お昼休みが終わった後、数学の授業で当てられる予定の静雄はぱらぱらとページを捲り、ここだとばかりにトントンと問題文を指でつついて臨也に見せた。
そこには三列にも四列にもまたがる問題の式が印字されている。
この問題、以前に静雄とて頑張って解こうとは思ったのだが、正直解き方がさっぱり分からなかったのだ。
どれか公式を使うんだろうなとは思うが、どの公式を使えば良いかも分からない。
もっと言うなら公式を使うことで本当に解けるのかの確信がない。
もう完全にお手上げ状態だし、このまま一人で奮闘しても解ける気が全くしないというところまで来ているのだ。

「ああ、これか。これのどこが分からないの?」
「解き方」
「……また漠然としてるね。ま、いいや。これはね、前のページの公式を使うんだ。式がこういう形ならこれ使えば解けるから中の数字が変わっても慌てないでね」
「ふーん。これだな、分かった」

ペンケースからシャーペンを取り出し、持参したノートに問題と今教えてもらった解法を書き込んでいく。
お弁当の中身をつまみながら静雄のノートを見ていた臨也だったが、見られてると気づいた静雄はさっと臨也から身体を背けた。

「……見るなよ」
「なんで?」
「なんでって見られてたら恥ずかしいだろ!」
「解き方が間違ってるかもしれないなんて気にしなくてもいいよ。間違ってても気にしないから」
「間違ってる間違ってるってうるせえな」

つんと顔を臨也から外した静雄はそのまま問題を解こうと式を書いたり、間違ってると感じたのか消しゴムで書いたものを消したりしている。

「うーん……」

さらりと一房顔へと流れた金色の髪を細い指で耳へと掛ける静雄の仕草が色っぽい。
教科書をじっと熟視している、瞼を縁取る長い睫毛は頬に濃い影を落としている。
穏やかな風に静雄の制服のスカートがふわりと翻り、裾から伸びる色白の長い脚を惜し気もなく曝している姿はひどく扇情的だ。


(ああ、シたいなあ)


このまま弁当を食べ終えたら静雄との甘くて濃密な時間を過ごしたくなる。
でもさすがに勉強の邪魔をして機嫌を悪くさせるのだけはどうにか避けたい。
せっかく屋上は二人きりで誰も邪魔する人間なんていないっていうのに、手も出せないなんてとんだ拷問じゃないか。
ここはぐっと堪えるべきかな、なんて諦めかけていたら、式を書いたり消したりしていた静雄の指がピタリと止まって遠慮がちに臨也を見つめてきた。

「ん? どうしたの? どこか分からないところあった?」
「その……ここ、が」

さっきまで隠すようにされていたノートだが注視してみると、何度も何度も問題を解こうとした跡がくっきりと残っている。
消しゴムもかなり使ったみたいだが、どうやら完全に解ききるまでにはいかなかったらしい。

「どれどれ? ……シズちゃんこれ、ここの計算が間違ってるよ。小数点以下がおかしい。見直してみて。ただのケアレスミスだから」
「ケアレスミス? ん、と、ここか。ああ、そっか、分かった! 確かに間違ってるな」
「ここまで解けたら後はもう大丈夫だと思うけどあと少しだから気を抜かないで」
「ん、そうする」

そのまま教科書とノートに向かって問題を解いていたが、数分もしないうちにノートを手に取って「できた!」と静雄は嬉しそうに声を上げた。
どうやら解けたんだろう。
珍しいことによほど嬉しいのか、目もキラキラと輝いている。

「おい、解けたぞ臨也!」
「良かったじゃん、シズちゃん。それで肝心の答えは……っと。うん、答えもちゃんと合ってる。すごいよ、こんな短時間で解けるなんて」
「これで当てられても大丈夫そうだ。ありがとな、臨也」
「どういたしまして」

今まで解けなかったものが解けて嬉しいのか気が乗っているのか静雄は満面の笑みを浮かべていたが、今度は二問目に視線を向けている。
どうやら本格的に今問題をやりきってしまおうということだろう。
やっと問題から解放され今度こそ甘くて濃密な時間を過ごせると思っていたのに、静雄は二問目にまで手をつけはじめたではないか。

「え、シズちゃん、二問目も当てられてるの?」
「いや、当てられてるのは今の一問目だけだ」
「じゃあ勉強はもう脇に置いとこうよ! 今やらなくていいじゃん! それより俺さ、勉強教えたんだからご褒美欲しいな」
「……えっ? お礼言っただろ?」
「お礼は言わなくていいよ」

いきなりな言い方で何を要求されるか分からず固まっている静雄に、さらに臨也は追い打ちをかけてきた。
こうなったらもう逃れられない。


「当てられたところがちゃんと答えられたらご褒美として今日は校内でシようね」


「ごちそうさま」と言いながら綺麗に食べきって弁当箱を屋上のコンクリートの上に置く臨也の紅い瞳は爛々と光っていた。













2010/11/8

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