買いました 「あれ、これどうすんだ?」 携帯電話をやっとのことで持ち出した焔椎真はさっきからメール画面を開こうとしているが、買ったばかりで使い方がまだ分からないのかメニューボタンを押してみたり携帯電話に内蔵された電卓機能やアラーム機能を出しては消している。 「説明書読めよ。ちゃんと付いてるだろ」 「そんなん面倒くせえじゃねえか」 「お前は……」 はあ、と大きく溜め息を吐いた愁生を焔椎真はちらりと横目で見ながらまたカチカチとボタンを押しているが、やはりメール画面は出てこない。 「おっかしいなー」 携帯電話を焔椎真が弄りだしてからどのくらいの時間が経つのだろうか。 愁生が部屋の壁掛け時計を見ればゆうに一時間は過ぎている。 話し掛けてもさっきから焔椎真は適当に返してくるし、今もなおほったらかし状態が続いているのは全然面白くない。 ほったらかし状態が続いて若干の苛立ちが生まれたのを隠すようにベッドから腰を上げたら、自分の携帯電話が着信を知らせた。 誰からかと思いつつ画面を開いてみれば、メールアドレスの@マーク前は携帯電話の番号になっていて。 アドレスはその人間が携帯電話を持ちはじめたばかりだと主張している。 『やっぱいちばんにめーるおくるのはしゅうせいだよな』 文字打ちに慣れてないのか本文は全てひらがなではないか。 あまりの不慣れさにくすりと小さな笑みが零れるが顔にははっきりと出さない。 そのかわりすぐに自分の携帯電話からメールの返信をする。 一刻おいて今度は焔椎真の買ったばかりの携帯電話が内蔵された着信音を響かせた。 「うわっ!」 いきなり音が鳴ったから驚いたらしい焔椎真は、四苦八苦しながらもメール画面をなんとか開けたみたいで。 返した内容を見てひどく嬉しそうに笑った。 2010/10/29 |