真田ァ!誕生日おめでとう!!!! | ナノ


▽ 触れた唇



「みょうじ…」


やっときたか…ゴクリとつばを飲み込み、唇を突き出すように上を向く。ここまでが長い道のりだった。肝心の彼は私の肩に手を置いてからピクリとも動かない。もうこのまま私から行ってやろうか。…でもやっぱり初めては私からするんじゃなくて、して欲しい。目をギュッとつぶって待つ。ここまで来てやめるほど意気地なしでもへたれてもないだろう。


真田くんとお付き合いして半年が経つ。中学生カップルということを踏まえれば長く続いている方なんじゃないかと思う。それだけれど、私達は半年付き合って恋人らしいことはしたことがなかった。手をつなぐこともなければキスもなく、それより先…なんてのは夢のまた夢で。何だこの超スローペースなお付き合いは!友達からすると「ウーケーるー」という私達だったけれど、それも今日でおしまいだ。恋人としての第一歩を、今、二人で、歩き出すんだ…!


「…真田くん」


自分からねだるのは恥ずかしいけれど、こ、これくらいなら…!このドキドキが真田くんに聞こえてるんじゃ…なんて少女漫画みたいなことを考えながらひたすら待つ。真田くんはどんな顔をしているのだろうか。目をつぶって失敗した。またすることがあるのなら…いや、絶対にするけど!その時はちゃんと真田くんの顔が見たいな。


「いい、よな」
「うん…」


よし来たそら来た!私はもう心の準備できてるから、だから早く来て真田くん!彼にした返事とは裏腹に、私の心の中はお祭り騒ぎだ。真田くんの手が私の頭を固定するように周り、彼の体が動くのを風の動きで感じる。ああ、私達ついにキスするんだね、真田くん…!


「…え?」


ちゅう、と言う音もなければ私の唇にそういうった感覚もない。実際には感覚だけならあった。…唇にではなく、おでこにだけど。バッと目を開けて真田くんを凝視すると、照れた顔で口を押さえ、斜め上を向いている。何その満足した表情は!話、私はこんなデコチューくらいでは全然満足しないんだからね!?


「…真田くんのいくじなし」
「…順番通りにするのがセオリーだろ」
「じゃあオデコの次はどこなの?」
「頬だな」
「…」


唇にキスをするまでに一体どれくらいの時間がかかるんだろう…順序を踏むという面では誠実なのかもしれないけれど、私からすればヘタレだヘタレ。真田くんの口を隠してる手を無理に取っぱらってできうる限りの背伸びと共に頬にキスをする。ほら、ここまで来たんだから次はちゃんとしてよね。

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