真田ァ!誕生日おめでとう!!!! | ナノ


▽ たとえ君死するとも




人間というものは、案外あっさりと死ぬものらしい。彼女の死というものは学校中で話題となり、それは地方紙に小さな記事として載るくらいになっていた。

突然死

馴染みがない言葉だった。朝、母親が彼女を起こしに行くと、その時には既に亡くなっていたそうだ。原因も不明で、体中どこも悪いところはなく、まさに言葉通り突然、死んだのだ。


「真田くん」
「大丈夫、ですか」
「…まだね、あの子の目が覚めるような気がするのよ、だって本当に綺麗な寝顔でいつもと変わらなくて、それなのに、死んでいるのですって」
「おばさん」
「わかってはいるのよ、でもね、やっぱり信じられなくて…」


なあ、なまえ、前に一度、お前に紹介された時のおばさんとは全く違う、ひどくやつれた顔で俺に向かって話すおばさんはまるで夢を見ているような顔をしている。俺も、俺も未だ信じられん。変わらない日々だと考えていたあの日が嘘のように懐かしい。こうもあっさりと、人は居なくなるものなのか。


「学校、あるのにすまないね」
「いいんです」
「あの子も喜んでいるよ」


綺麗な寝顔のなまえの顔のそばに一輪の花を置く。最後にもう一度触れたいと思うのに、触れたら本当になまえが死んでしまったということを受け入れなければならなくなってしまう、その現実が辛くて仕方が無い。
さようなら。
そういえば最後に交わした会話はさようならだったな。珍しく帰りの時間があって、薄紫の空の下で、時刻は思い出せないが月が顔を出した頃、内容は課題の話や部活の話…そうだ、よくあるなんともない話で…


「…」


俺がそちらの方に行くのはいつになるのだろうか。お前のように突然死ぬのかもしれないし、長生きをするのかもしれない。もし長生きをしたら、俺は今ほどお前のことを覚えているのだろうか。声や顔や思い出を覚えていられるのか。ただでさえ俺の中のお前の声が、どんどんと薄れていっているというのに。
お前が死んだとしても、俺はすぐにそちらにはいけない。だが今俺はどうしようもなく、お前に会いたくて仕方がない。お前の体はすぐそばにあるのに、なんだか変な話だな。



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