真田ァ!誕生日おめでとう!!!! | ナノ


▽ ノートの名前


朝目が覚めて、時計を見るといつもより早い時間だった。だからなんとなく早く学校に行ったら…これだ。


「ノートみんなの机に配っておいてね」
「…はい」


雑用押し付けやがって畜生やってられん。けれど朝早くきたってやることはないし、ある意味助かったのかもしれない。よっこらしょ、なんて声と一緒にノートの束を教壇において一息つく。朝っぱらから肉体労働をすることになるとは…


出席番号順でも席はバラバラだしいくら覚えているからってめんどくさいものがある。えーっと次は…真田くんか。真田くん前は私の斜め前だったんだよなぁ。背丈があって黒板が見にくかったことは覚えてる。今はまだ部活なのかな、ご苦労なこった。


「…にしても真田くんの字、きれい」


ノートの表紙に書かれた名前は男らしい字というよりも、本当にきれいな字というのがしっくりくる。ぺらりとノートをまくっても同じようにきれいな字で内容が綴ってあり、彼の字は書道のお手本みたいに正確でとめはねもしてあり読み易い。ふと私の字を思い出してみるが…うーん、真田くんの方が格段に上手だな。書道とかやっていたのだろうか。


「俺のノートがどうかしたか?」
「ひっ!?…あ、さ、真田くんおはよ」
「ああ、おはよう、で、どうした。そんなに見つめて」
「いや、真田くんの字ってきれいだなって思って」


特にやましいことでもないのでそのままを伝え、ノートを手渡すと、真田くんはびっくりした顔でありがとうとノートを受け取った。


「真田くん書道とかやってたの?」
「ん?ああ、趣味でな」
「趣味!?」


書道の時間があまり好きでは無かった私にとっては衝撃的すぎる。爪が黒くなるし服についたらお母さんに怒られるし…やっぱりいい思い出がない。それが趣味っていうんだから、なんていうか、渋いな。でもそれなら真田くんの字が綺麗なのも納得だ。


「ノート、配るんだろう?」
「あっ!忘れてた!」
「手伝おう。そちらの方が早いしな」
「うわごめん!ありがとう助かる!」


真田くんの言葉で我に帰り、ノートを机においていく。二人いると作業もスムーズだ。配り終わったところで真田くんからみょうじ、と呼ばれるので振り向くと、一冊の何も書いていないノートを差し出される。なんだこれ。


「これはお前のものではないのか?名前が書いていないが」
「…あ、本当だ。書き忘れちゃってたみたい」
「たるんどるぞ!…ほら、ペンを貸せ」
「え?なんでペン?」
「いいから早く出さんか!」
「はいッ!」


おっそろしいやつだなホント!慌てて筆箱からボールペンを取り出すと油性ペンに決まっているだろう!と怒られた。今度こそ油性ペンを取り出して渡すと、きゅぽんと軽い音とともに外されたキャップを机に置き、キュッキュとノートに真田くんが"みょうじなまえ"と私の名前を書いていくじゃないか。


「今度は忘れんようにな」
「あ、ありがとう…でもなんで?」
「お前に字を褒められたのが嬉しくてな、それで、なんとなくだ」
「なんとなくかぁ…」
「名前もそれであっているだろ?」
「うん、バッチリ。でもよく私の名前、漢字までちゃんと覚えてたね」
「そ、それは」
「それは?」
「…クラスメイトの名前くらい覚えとるわ!」
「それもそっか」


私のノートなのに真田くんのきれいな字で書かれた名前。なんだか変な感じだけど、ちょっと嬉しい。あーあ、このノートが終わっちゃって新しいのになっても真田くんが名前、書いてくれたらいいのになぁ。




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