真田ァ!誕生日おめでとう!!!! | ナノ


▽ 届かない思い



新しく入荷した本に保護カバーをかけては積んでを繰り返していくうちに、外はすっかりと暗くなっている。図書委員の仕事は嫌いじゃないけれどこうやって遅くなるのは困ったところだ。


「作業中にすまんがこの本、貸出を頼む」
「あ、大丈夫だよ。ちょっと待ってね」


ピッとバーコードを読み取り差し出すと明後日には返す、との言葉。真田くんは図書室の住民というほどでもないけれどそれなりにここを訪れる人物の一人で、気がついたらこうやって話をする仲になっていた。


「新刊か?」
「うん、話題の本とかリクエストのやつ。真田くん借りてく?」
「お前がすすめるモノがあるのなら借りるのもいいな」
「えー?私この中の本はまだ読んでなくて…あ、これは?届かない想い、だって」
「これを俺に読めというのか」
「たまには趣向を変えるてみるのもいいんじゃないかな」


ピンクのカバーに題名がレタリングされたいかにも女子が読みそうな、恋愛小説。真田くんが読んでいる光景はさぞかしおもしろいことだろう。最近話題らしく来年には映画化するとかなんたらでリクエストが多かったのだ。


「でも、届かない想いか…」
「みょうじはあるのか」
「うーん…強いて言うなら私のライブに行きたいという思いが届かないことくらいかな?真田くんは?」
「俺は…届いているのかどうか、分からないときはあるな」
「え!?真田くんあるの!?」


恋愛偏差値は私よりも真田くんの方が高いみたいだ。なんか女子として負けた気分…詳しい話を聞こうとカウンターから身を乗り出したところで、タイミング良く下校のチャイムがなる。完全下校まであと10分しかない。図書室からは近くも遠くもないけれど、急がないと間に合わない。


「真田くん!帰ろう、ほら!」
「…一緒にか?」
「そうだよ!さっきの続き聞きたいもん!」
「…話すことはないがな」
「ケチんぼ!あーもうっ早くしなくちゃ!真田くん手!」
「手?」
「私引っ張って走って!走るの遅いから助けてよ!」


風紀委員にお願いすることでもないけれど、下校時間を過ぎても校内にいると反省レポートを書かなくちゃならんのだ。そんなの絶対に嫌だ。少し迷った後、真田くんは私の手をがっちりと握り図書室からふたりで飛び出した。




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