真田ァ!誕生日おめでとう!!!! | ナノ


▽ 君の手まで数センチ



※前の続き


定期的に揺れるバスの中、どこを向けばいいのかわからずにひたすら俯いて時がすぎるのをじっと待つ。なんでこんなことになったのか。
私の寝言を聞いた同室の子がいらない気を聞かせてくれたおかげで、私は帰りのバスでなぜか…本当になぜか真田くんの隣の席に座っている。ちなみに会話はない。気まずさマックスである。


「みょうじ」
「な、なに?」
「足はいいのか」
「うん、大丈夫」
「そうか」


共通の話題はこれしかない。困ったぞ、ここからどうやって話をふくらませていくのか…


「あ、そういえばね、夢に真田くんが出たよ」
「流石に夢の中まで責任は取れんぞ」
「そんなこと言わないよ。ただね、昔の頃の夢だったの」
「…お前が転んでおんぶして連れていった時のか」
「うわ、正解…」


よっぽど記憶に残っていたのか真田くんが当時のことをポツリと話し始めた。昔からみょうじは俺のあとを小走りでついてきたとか、何もないところで転んでは生傷を増やしていたとか、気がついていたならもうちょっと遅く歩いてよ!と思ったけれど、随分と間抜けなことも覚えられていて恥ずかしい。


「どんなに早く歩いても必ずお前は後ろについてきていたな」
「だって登校班を乱すわけには行かないし…」
「そういうところは今も変わってないな、辛くても辛いと言わないところも変わらん」
「真田くんだって、変わらないじゃないの」


性格が悪いなぁ、真田くんは。思わず笑うと真田くんも同じように笑っていて、ああ、やっと打ち解けられたような気がする。同じ班になってよかった。じゃなきゃこうやってお話することもなかったもの。
昔に思いを馳せながら雑談をしていると、突然車体が傾く。うわっ、すごい急カーブ。シートベルトをしていたからいいけど遠心力強かったなぁ。


「真田くん今のカーブ大丈夫だった?」
「あ、ああ…カーブは問題ないが…」
「どうかしたの?」
「…手」
「手?」


手がどうしたのか。自分の手元を見ると自分の左手が真田くんの太ももに乗っかっていて、カーブの時にとっさに左手をついたんだっけ。もしかしてこれのことなのかな?真田くんの方を見るとほっぺたが少し赤くて、こんな手が触れただけなのに大げさだよ…それがおかしくてクスクスと笑うと、真田くんはさらに赤くなり、そしてそっぽを向いてしまった。それにつられて赤くなる顔が見られないようにまた俯いて、彼の太ももにおいた左手をで顔を隠した。



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