▽ ぶつかる度そらす視線
(…また)
最近よく真田くんと目が合う。ふとした時、目線の先には真田くんがいて、しかもガッツリと目が合うのだ。彼と目が合うと私の体は緊張から硬直してしまう。同級生に何を緊張する必要があるのか。何度もそう思うのだけれど、私の体は金縛りにあったみたいにピクリともしなくなる。
(あ、逸らした)
体が動かなくなると言ってもそれは一瞬の出来事で、硬直した体は真田くんがその視線をそらした途端に、何もなかったかのように動き出す。どうしてここまで彼に緊張するのだろうか。ただ見るだけならば緊張することもないのに、目があった瞬間にそれは最高潮に達していく。
「なに見てるの?」
「え?あ、真田くんと目が合って…」
「…あのさ、前から思ってたんだけれどね?なまえって校則違反とかするような子でもないじゃない、なのに真田くんってよくなまえのこと、見てるんだよね」
「うそ…」
真田くんが私を見ている?まさか、そんなことは…でも確かにお互いを見ていなければ見つめ合うということはないし、やっぱり私を見ているのかな。なにか用事があるんだろうか。でもそれならすぐにそらす理由がわからないし…
「好きなんじゃない?」
「一応聞くけど…何が?」
「真田くんがなまえのことを」
「まっさかぁ!そんなのありえないって」
いくらなんでも唐突で適当すぎる。ないない。なんとなく気になってちらりと彼に視線を向けると、あ、目が合った。体が固まってまた真田くんから目を逸らせなくなる。けれど真田くんはすぐに目を逸らすし…
(あれ?)
逸らさない。いつもならすぐに目を逸らされてしまうのに。それに何度嫌われていると思ったことか。急に黙りこくる私に友人が声をかけてくるけれど、それに返す余裕がないくらいに私の心臓がうるさい。さっきあんなこと言われたせいだ。
見つめあっていただけだったのに、真田くんは私にずんずんと近づいてくる。気がつくと硬直はほぐれていて、けれど彼が来るのに合わせて心臓がうるさくなっていって、体も熱い。やめて、そんなに近づかれたら緊張でぶっ倒れちゃいそう…
「みょうじ」
「あ、あの」
「別にありえないことでもないだろう」
「待ってよ、それじゃ」
本当に真田くんが私のこと、好きってことになっちゃうじゃない。それならお願いだから私と目が合ったときに逸らすのをやめてよね、いつも寂しくて嫌われているんじゃないかって…それで…
「わかり易いのかそうでないのか、わかんないよ…」
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