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なんとなくわかるよ


「こんにちは、跡部くん。まさか合宿が同じ場所だって思わなかったな、こんなところで顔を合わせるなんてね!全っ全嬉しくない!」


…嘘、本当は嬉しい。跡部くんって会おうと思って会える人じゃないし、こんな場所で会えるとは思わなかったけれど、知っている人がいると少し肩の力が抜ける。彼にはちょっと悪いがこんな話しかけ方も、許して欲しい。だっているとは思わなかったから、つい…。

テニス部の合宿に来ていた私の学校は、女子の中ではそれなりに有名なところだ。有名なりに強化合宿なんて名前の地獄を毎年見ることになっており、今年は昨年までとは違う場所で行っていた。だからかこうやって跡部くんの中学と場所が丸かぶりしたのだろう。
明後日には帰ってしまうけれど、慣れない場所での合宿というのはそれなりに疲れるし気は休まらないし、正直な話ヘロヘロだった。…でもそれを彼、跡部景吾に悟られてしまうのは少し、いや、かなり嫌だ。きっとインサイトとかいうトンデモ技でお見通しなのだろうけれど。


「ハッ!そんなこと言っている割には嬉しそうな顔をしてんじゃねーの!」

「そう見えるなら跡部くん相当疲れてるのね、インサイトの使いすぎじゃない?平気?病院行ったら?」

「おい、聞いたか忍足。あいつ今俺のことをあんなにも気遣って…クッ…健気なこった」

「今のセリフをそうポジティブに受け取れるんは跡部くらいやろなぁ」


目頭を押さえて忍足くんとこそこそ話をしている跡部くんを見ると本当に心配になってくる。もしかして、インサイトってそんなに目を使うの?押さえちゃうくらい目が痛むの?これから将来を見据えるだろう彼の目のことを考えると、だんだんと心配になってくる。


「本当に大丈夫?」

「お前に心配されるなんて俺様もまだまだだな」


平気そうだ。心配して損した。







「あ、わかるわかる。綺麗に入ると吹っ飛ばされちゃう」

「ああ、俺もある。鍛錬を怠ることのないようにしているが師範級とやり合うとそうなる」

「やっぱり上には上がいるのよね…」


なぜか目が5時という、とんでもなく早く覚めロビーに向かうと、突然後ろから声をかけられ…それが今話している真田くん(彼も合宿らしい。男子は合同なのかな?)なのだけれど、世間話から始まった会話が気がつけば剣道あるあるへと代わっていた。
真田くんのお家は道場らしく、私は少しやっていた程度だけれど、共通の話題があると盛り上がる盛り上がる。今は胴が上手く決まると吹っ飛ぶ、なんて話をしている。綺麗に吹っ飛ぶから面白い。…いや、やられてる身としては辛いんだけれど。


「それじゃあ真田くんは…」

「おい」

「ん?あ、おはよう跡部くん。早いね?」

「真田とは知り合いか?」

「今さっき知り合ったの、彼、剣道やってるんですって。すごいよね、テニスもやってるのに」


私のように早く目覚めてしまったのか、それともいつもこの時間なのか、跡部くんに同意を求めると、それはもう嫌そうな顔をしてハッ!と人を小馬鹿にするような笑い方をして私を見つめる。な、何か変なこと言ったかな、私…


「だからなんだ、俺様の趣味を知っての発言か?」

「いや、知らないし。むしろどうして知ってると思うの」

「だろうな、仕方ない教えてやろうじゃねーの!俺様の趣味はなぁ、フェイシングだ!!」

「へぇ…」

「なッ…んだその生返事は!!」

「いや、ね?」


フェイシングだ!と言われてもそんな感じするなとしか思わないっていうか。跡部くんらしい、って感じ。ここで趣味は昼寝だ!なんて言われたらええー!?って感じだけど、意外性がないから反応のしようがない。


「もっとこう…あるだろ!」

「ないのよ、それが」


私の言葉についに何も話さなくなってしまった彼。…私が気の効かせたことをここでひとつ言うがいいのかもしれない。


「でもきっと跡部くんのことだし真剣に取り組んでるんでしょうね。趣味でも気を抜かないで頑張ってるんじゃない?」

「当たり前だろ、俺様を誰だと思ってる」

「そうだね。跡部くんのそういうところ、かっこいいと思うよ」


もちろん本心だし、嘘偽りのない言葉だ。彼のそういう真面目な部分は見習うべきところでもあるし、尊敬すべきところでもある。どうでもいいけど跡部くんに真面目って言葉が似合わなくてびっくりだ。なぜ。


「…名前、ついに本音を漏らしたな!」

「…なんて、そんなこと私が考えてると思ったら大間違いなんだからね!!」


取ってつけたような言葉を投げ掛ければ、そんなのまっまく効きません、なんて顔で私を見つめてくる。うーん、これがなかったら跡部くんは良い人なんだけどね。もったいない男だ。でもまあそんな彼も、嫌いではないのだけれど。




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フリリク参加ありがとうございました!
跡部様は何考えてるのかわかりやすそうですね。顔と態度に出るタイプ。たくさんの設定等々をくださったのに使いきれず、すみません!夜鈴さんが楽しめる話になっているといいな、と思います。
これからもサイト共々よろしくおねがいします!


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