痛いところをついてきやがる



「しっかしテスト週間でよかったね!部活あったらたまったもんじゃないし!!」

「それだけが救いだな」


流血沙汰になった体育も終わり、現在はお昼ご飯をもりもり食べている弦一郎さんとA組で作戦会議中だ。このまま戻らなく…という最悪の結果はできるだけ考えずに、とりあえず寝れば治る説を推しておいた。個人的にはこれが夢オチでも全然構わない。むしろそうであって欲しい。


「そうだ、弦一郎さん今日私の家来ない?お泊り会しようよ、せっかくの女の子同士だしこんな機会もうないと思うしさ!」

「なッ何を言っているんだお前は!仮にも俺とお前は…」

「俺とお前は、なんですか?」

「や、柳生…」


どこから現れたのか、ギラギラ眼鏡の柳生くんは私が見ているのに気がつくと、ぺこりとお辞儀をし、こんにちは名字さん、とさすがは紳士と呼ばれているだけあって丁寧な挨拶をしてきた。同じようにこちらも丁寧に返すとどんな目をしているかはわからないが優しげな微笑みをくれる。ううーん、紳士だ。


「真田さん、女性が俺などという一人称を使うのはどうかと思いますが」


め、めんどくせぇ…そんなこと言ってる柳生くんも一人称は私だろ。女みたいな一人称して。いや、男が使っても悪くないけど…。心の中でツッコミを入れるとそれを悟ったのか柳生くんが私に視線を向ける。眼鏡くもっててよくわかんないけど。


「あなたもです名字さん、どうして弦一郎さんなどと彼女を呼ぶのですか」

「いやだって…ねぇ?」

「だってもなにもありません。真田さんには弦子という名前があるではないですか」

「……」


なんというか、これ、辛いなぁ…。弦一郎さんの名前は弦一郎だし、弦子こそ私達二人にとっては馴染みのない名前。むしろどうしてそんな名前で呼べるのか柳生くん、きみだって知っていた筈なのに。本当の本当に、みんな弦一郎さんか男だったということを知らないのか、同じテニス部の人もですら、忘れちゃってるのか。


「いいの!弦一郎さんは弦一郎さんだし、それに柳生くんにとやかく言われる筋合いないもん!私達のことに口出ししないでよ、そんなんだから彼女の一人もできないんだからね!!」

「…そんなことは今関係ないでしょう!」

「いいやあるね!こんな口うるさいくて首突っ込んでくるやつヤダもん!」

「ぐっ…!大体そんなことを言うから名字さんだって恋人ができないんですよ!」

「いやいるし」

「え?」

「ふつーにいるし」


ちらりと弦一郎さんの方に視線を向ければ、ニブチンの割になにか理解したのか、私に同調するように頷いた。今は女の子だけど、柳生くん、きみも知っていたじゃないの、あなたの目の前にいる人が私の恋人だって。……だからそのびっくりした顔そろそろやめてください。どんだけ驚いたんだよ。




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