振り返っても君はいない



ここ一週間私は浮かれきっていた。憧れであり愛しの真田くんと、お、お付き合いすることになったからだ!!永遠に友達でもいいなんて思っていたけれど、そんなことはなかった。恋人バンザイ!特にこれと言って恋人をしいことはしたことないのだけれど、初恋が実ったり初カレができたり…私を色ボケさせるには充分すぎる要因かたくさんあるのだ。


「…名字」


そんなことを考えていると後ろから真田くん本人が声をかけてきてくれた。いつもより高いけれどこの声は真田くんで間違いない。噂(…はしてないけど)をすればなんとやら、真田くんの声を私が聞き間違えるはずもなく、私ができるとびっきりの笑顔で振り返る。


「真田くん!……ん?」


おはよう、と言うつもりが疑問符に変わる。だって仕方ない。真田くんがいると思って振り返ったのにそこに真田くんはいなかったのだ。
ついに好きすぎて幻聴が聞こえるようになったのかな…?嬉しいような困るような…とりあえず踵を返して教室に向かう。お互いの教室はさほど遠くはないけれど私と真田くんがバッタリ出会う確率は低い。今日は真田くんとたくさんお話できますように。いつから始めたのか覚えていない願掛けをしながら歩を進める。


「待て、待ってくれ名字」

「真田くん!……おっかしいな、やっぱりいないや」

「名字!」


また真田くんの声が聞こえたかと思うと、今度はまさしく美人と言う言葉が似合う女子生徒に腕を掴まれた。真田くんに気を取られて気づかなかったけど、この子、とんでもなく綺麗だ。
同じ中学生とは思えない大人っぽさにどこぞの女優みたいな顔立ち、最近の子は発育がいいと聞くけれどそんな言葉で片付けていいのか?と言いたくなるほどプロポーションの取れた体。すんげー…こんな子立海にいたっけ…?
ぽかんとする私に美女は困り果てた声で私の名前を呼んだ。


「え?」


耳を疑ったが、真剣な眼差しをしている彼女が言ったということで間違いないようだ。
真田くんの声。
もしかして血縁者かなにかと思ったけれど、それも違う。だって真田くんお兄さんがいるだけだって言っていたし、それに少し高いけれどこの声は紛れもなく真田くんだ。


「さ、真田くん?」


ひきつっているであろう顔で聞き返すと、彼女はなにも言わず、ただ静かに頷いた。



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