アポロンは墜落した 水面に落ちる雫を見て、ひとつため息をついた。 私は、真田くんに監禁されている。これは紛れもない事実だし、真田くんも肯定していた。ただそれは私の想像と大きく離れていたのだけれど。 監禁と言っても割と自由だ。 やることはないけれど、お風呂に入れるし服だって好きなものを着れている。長い鎖のついた足枷がある以外は、普通に(というのもおかしいけれど)暮らしている。その足枷だって初めこそはあったものの、入浴する時は外してくれるし、今現在、浴槽に浸かる私の足に枷はない。 そしてなにより真田くんは私に乱暴なことは一切しなかった。ただ穏やかに私を見つめては名前を呼んだり、愛してるなんて言ってみたりするだけ。私に触れることさえ、たまにしかない。私がどうしてこんなことをするの、と尋ねると真田くんは決まって愛しているからだ、なんて返す。 「愛してるならここから出してよ」 私のつぶやきに答える人は誰もいない。 「湯加減はどうだった」 「それなり」 「そうか」 濡れたままの髪で椅子に腰掛ける。カチャン。真田くんは慣れた手つきで私の足に枷をはめる。まだ火照っている肌に似合わない金属製の枷。もしこの時、逃げ出せるのなら。そうしたら私は自由になって、そして真田くんは (…どうなってしまうのだろう) 真田くんが鍵をしまい、風邪をひくぞ、と言って頭にタオルをかける。家とは違う柔軟剤のにおいが、ふわりと漂った。 |