え、え〜?お前パンツ穿いてないってマジ〜?? | ナノ
八つ当たり




ところで、私は普段あまり怒らないタイプだ。怒りの沸点が低いのか、大抵のことなら一言「もう!」と言うだけで許してしまう。だからといってストレスを溜め込むタイプでもないし、私のいいところの一つなんじゃないかなって思ってる部分だ。さて、本題に入ろう。なんでこんなことを考えているかというと、それはトイレへ駆け込もうとする私の行く手を阻み、ののほほーんと話している後輩、切原くんがすべて悪いのだ。

「先輩!ホント英語がヤバイんすよ!!追試はほぼ確実…なんて言われちゃって!」
「へー…」
「それで先輩の出番なんすよ!先輩英語得意っしょ?だから教えて欲しいというか…ね?一生のお願いっす!」
「わー…軽い一生のお願いだね…」

私の目が笑っていないのに気がついてよ切原くん。私今それどころじゃないんだよね!表面張力のギリギリというか、今トイレに向かわなきゃ覆水盆に返らずは必須というか…!
ここで私がトイレに行きたいと告げれば切原くんは私との会話をやめてトイレに行かせてくれるだろう。けれどいくら切原くんとはいえ男子に「ごめん、ちょっとトイレ行きたくて!」とは言いにくい。トイレに行くって知られたくないこの乙女心、きっと切原くんには理解できないと思う。

「もう!なんすか先輩!今日ちょっと冷たいっすよ!」
「ご、ごめ…私用事あって…」
「それ、俺より大事なんすか!?」
「まあ…」
「ひっ…ひでぇ!ホントに大事な用なのか俺がジャッジするんでなにするのか言ってくださいよ!教えてくれるまでここ、通しませんから!!」
「はい!?」

切原くんってどうして突拍子もなく変なこと言うの!?馬鹿なの!?あっ馬鹿だから英語教えてもらおうとしたのか…
私を通さないと言った切原くんはガチらしく、バスケを彷彿させる腕の動きで私の行く手を遮ってくる。チクショウ…これはどうやら言うまで通してくれなそうだ…

「あ、あの…トイレ…に…」
「え?」
「だからトイレに…」
「す、すみませんよく聞こえなくって」
「ああもう!だからトイレにおしっこしに行きたいって言ってるの!」

息を切らして私が言えば切原くんはやってしまった、という顔をして口元を手で押さえた。私がその顔したいわ。なんでこんな廊下でおしっこしたいだなんて後輩に言わなくちゃいけないの。恥ずかしさから顔がぐんぐん赤くなる。もう切原くんとしばらく会いたくない。

「あ、えと…すみませんっした!」
「切原くんの…ばかっ!」

そんな捨てゼリフを残してトイレにに駆け込み、慌てて便座に座る。…こういうときだけパンツはいてなくてよかった…

なんとかトイレに辿り着いてほっとしていた私は、切原くんが私の入ったトイレのドアを見て喉を鳴らしていたことを、知るはずもなかった。


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