皆様、ラッキースケベとはご存知でしょうか。スケベするつもりはなかったのにスケベしちゃうアレである。Toloveる的なの現象のアレである。突然何を言い出すんだと言われますと、つまり今ラッキースケベを体感しているんですよ、はい…




お手洗いを済ませた私は教室へ戻ろうとしていたところで、同じクラスの黒羽くんにたまに教室でも見かける天羽くんと遭遇した。よう苗字次の授業ってなんだっけ?なんて片手あげながら歩く黒羽くんが私に近づこうと一歩踏み込んだ瞬間…つるりんと、それはまあ盛大に滑った。
確かそこは水道の近くで、最近調子が悪いためその付近が水浸しになってるって先生が言ってた気がする。黒羽くんが滑った瞬間、ふたり揃って目をまん丸にしたのは記憶に新しい。しかし滑ったくらいじゃ転ばない黒羽くん。体制を整えようとさらにもう一歩踏み出し…またつるんと滑ったのだった……。
そこからはまあToloveるよろしく、私の元へダイブしてきた黒羽くん。男子を支える筋力を持ち合わせていなかった私はそのまま後ろへ倒れ……ここら辺は当事者の私も良く分からないのだけど、気がついたら黒羽くんの頭が私の太ももに挟まれ、受身を取ろうとした彼の手がスカートを握ったため、盛大にめくられるというとんでもない出来事が起きたのだった。ちなみに私の第一声が「オウ…これが真剣白刃取り…」だったので一部始終を見ていた人達が一斉に吹き出され、大変恥ずかしい思いをした。というか現在進行形でしている。




「あの大丈夫、大丈夫だからっ!そんなに謝らなくっても!」
「でもあんなこ、と……して!なにもしねぇってのはできないだろ!」
「いやいや!充分謝ってもらったし!黒羽くんがそんなワザとあんなことするような人じゃないって私もわかってるからさ!」
「苗字…」
「だから、さ…まずはちゃんと立たない…?流石に廊下に二人して座り込んでると目立つっていうかなんていうか…パンツ…」


時間帯もありそりゃもう目立つ。ざわざわとしている周りに顔から火を吹くどころじゃない。パンツ丸見えのままだし。ちょっとこれは恨むけど仕方ないと思って欲しい。いやパンツ晒されて恨まない方がおかしいけれど…
私のパンツ発言に首をかしげていたが、状況を確認したのか奇声を発しながら後ずさりしていく黒羽くん。そりゃあ目の前の女がM字開脚して下着おっぴろげでそれの原因が自分だったらそんな反応を取りたくなるだろう。めくれたスカートを直して立ち上がり、黒羽くんの前に立つ。今六角中ナンバーワンの注目を集めているであろう私達。こんな目立ち方はしたくなかった…


「あの、黒羽くん立てる?平気?」


そんなことを言いながら彼に手を差し出すと私手をつかもうとして、だけど躊躇して、結局元に戻されていった。一体どうしたのか。黒羽くんの顔は暗くて、いつもの明るい笑顔はない。そりゃそうだけど本音を言うならいっそのこと笑い飛ばして欲しい。


「…流石にこれ以上迷惑かけらんねぇって」
「いやぁ、ここまでくるとこれくらいどうってことないよ」
「悪いな…」
「あ、いやそういう意味じゃなくてその…私はあんまり平気じゃないけど、でも大丈夫だから。黒羽くんだし、平気だよ」
「え!?」
「え!?いやっ変な意味じゃなくて、その!!」
「…いいよ、サンキュ。すまねぇけど手、借りるわ」


私の手をしっかりと握り立ち上がる黒羽くん。あ、結構重い。そりゃ男の子だもんなぁ当たり前か。よいしょ、なんて掛け声とともに引っ張りあげる私。…この時はまるっきり忘れていたのだ。ここで彼が滑り私にダイブしてきたということを。


「ひゃあっ!?」
「うおっ!?」


一歩後ろに下がってもっと引っ張ろうとした時、盛大に足元をすくわれた。ああそうだ…ここって水浸しになってるんだった…


「危ねぇ!!」


黒羽くんがそう叫んだと同じくらいにぎゅっと私の体が彼に引き寄せられる。ちょっと濡れてるのはここの床がびしょびしょだったからだろう。でも、でも黒羽くんはあったかくてがっちりしていて、それに胸がキュンとする。なるほど、ハーレムモノの女の子はこうやって主人公に落ちていくのか…


「お、おい大丈夫か苗字」
「…うん、ありがとう黒羽くん」


だってさっきまではToloveる的展開に怒ってるくらいで、しかも私は彼のことただのクラスメイトくらいにしか思ってなかったのに。こんな恋の始まりってあるのか。ああもう。黒羽くんとだったらどんな展開もバッチコイだけど、ほかの女の子にはこんなにかっこいいところ見せないでね。


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