「はぁっ…はあ、真田さんっ!!」
息も切れ切れ、腕を組んで仏頂面をしているプロデューサーに駆け寄ると、首元にふわりとタオルをかけられる。小さなライブハウスだけれど精一杯歌って踊って笑顔を振りまいた。わたし苗字名前は今、アイドルをしている。そこまで有名でもないけれどファンもいて、グッズも少しずつ売れてきて、着実に前に上に進んでいる。
「っわたし、わたし頑張りました!」
「ああ。今までで一番の歌と踊りだった」
「ファンのみんな、楽しんで、もらえましたかね…!?」
「もちろんだ。…息が切れているな。ほら、そこで休め落ち着いたら話せばいい」
「えへへ…たるんでますかね、わたし」
「…今日だけは許そう」
わたしのプロデューサー、真田さんは厳しい人だけどステージに上がった後はいつも優しく出迎えてくれる。真田さんが普段のレッスンに厳しいのはもっと輝けるように、ファンのみんなに楽しんでもらえるようにって知ってるから、どんなに厳しくされてもへっちゃらだ。仏頂面なのもきっと心配してのことだということも、最近わかってきた。
「プロデューサーも、楽しんでくれましたか…?」
今日のライブのまで頑張ってきたのはもちろんファンのためというのが一番だけれど、真田さんに頑張ってきた成果を見てもらいたくて、楽しんでもらいたくて、ここまでやってきたんだ。なんて返事をされるのかちょっぴり怖くて、真田さんがかけてくれたタオルに顔をうずめる。いい匂い、柔らかくて気持ちよくて…これ真田さんのタオルなのかな…
「当たり前だろう」
「ほ、本当ですか!?」
「ああ。俺は名前の一番最初のファンなのだから」
大きくてゴツゴツした手。真田さんの手はあたたかくていつも安心する。真田さん、わたし頑張ります。今はまだ小さなライブハウスだけれど、大きなステージで、あなたに一番輝いているところを見せられるようにどんなに辛いことも頑張りますから。だからずっと側で応援しててください、真田プロデューサー!
---
小ネタにあるやつの逆転版みたいな