お風呂のあとってどうしてこんなに疲れて、眠たいんだろう。ふわぁ…なんてまんまのあくびをしてコタツでまどろむ。このまま寝たら確実に乾かしていない髪は翌朝ひどい有様になるだろうし、全身バキバキのこりまくりだろう。…でも、そんなのはもうどうでもいいくらいに私は眠いのだ。そりゃもうすぐそこにいる睡魔の手を取りそうなくらい、穏やかな怠惰に全身を包まれている。


「名前、風邪引くよ」


もう目が開かないくらい暖かな心地に身を委ねていた私はサエの言葉でふと自我を取り戻した。なんて言っても目は閉じたままで動こうとはしないのだけれど…


「ほら早く起きて、ここで寝たら体に悪いよ」
「んー…」
「髪だって乾かしてないんだろう?」
「んー…めんどくさい…」


私の言葉にまったく、なんて言葉をこぼしてサエは私の元を離れた。そりゃそうだ。サエだってもう眠たい時間だしいつまでも私にかまってはいられない。名残惜しさを感じながらもまどろみを再開したところで、上から声がかかる。


「…サエ?」
「ねえ名前、いま起きたら俺が髪を乾かしてあげてさらにベッドまでお姫様抱っこで連れていくんだけどコタツで寝てるのとどっちがいい?」
「えー?……コタツで寝てるの」
「アラッ」
「ここから出るのめんどくさいんだもん。あとねむい」


まさかフラれるとは思ってなかったのか、サエはうーん、なんてわかり易く唸ったあとに私のおでこにチュウをした。それにだるそうに目を開けることで答える私を見て、無邪気に微笑むサエが眩しい。蛍光灯のせいもあるのだろうけど寝起きということもあって輝いて見える。


「眩しいんだけど」
「でも目は覚めただろう?」
「キザ過ぎ、30点」
「こりゃ厳しいな」
「…とにかく髪の毛と抱っこ、よろしく」
「まかせて」
「ついでに歯磨きも…」
「それくらいは自分でやりなさい」
「こりゃ厳しいな」


サエの真似をしておどけてみせると、世話の焼けるなぁ、なんて言いながら私の目の前に手を出した。私が差し出された手を掴むとサエはそのまま私をズルズルと引きずり出す。握った手はポカポカしてて妙に落ち着く。あたたかいからか、サエだからなのか。多分両方なんだろうけれど。


「サエの手はあったかいなぁ」
「名前は熱いね」
「そりゃコタツにいたから…ベッドは冷たいだろうなぁ」
「しばらくすれば温かくなるよ」
「それまで手握っててもいい?」
「いいけど、ベッドに入ったらね。じゃないと髪の毛乾かせないしお姫様抱っこもできないし」


いつの間に用意したのかドライヤーがサエの手元にあって、私の髪を勢いよく乾かしてゆく。首すじに当たる温風が心地よくて、サエの髪を撫でる指が気持ちよくて、ついつい待ちきれず、私はまたまどろむのであった。
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