たまらん演技だった
たまらん演技だった
たまらん演技だった

「………」

頭の中をエンドレスで駆け巡る真田くんの言葉。今まで演技を褒められることはあった。もちろん嬉しかったしもっと頑張ろうって、そう思えた。けれど、けれど…

(たまらん演技ってなに!?)

たまらん、そう、これが悪い。だってたまらんなんて普通言わないもん。たまらん…たまらんか…そうか…たまらないのか…。
バッと目に入った辞書を見てなにか痺れるような…そんな感覚が私を襲った。

(た、た…っと…)

猛スピードで辞書を引いていく。たまらん、ではなく、たまらない、でそれは登録されてあった。
この上ないほど良い、と言う意味らしい。そんなに、そんなに…いいものだったのだろうか…?

「わけわかんない…」





「なあ、佐藤」
「なん…でしょう……?」

今度はなんだ、と思った。
古典の授業も終わり、昼休みになった。お弁当を取り出した私の目の前に立ち、そのままこう続けていった。

「メシ一緒していい?」
「ど、どうぞ?」
「んな固くなんなくってもいいだろ、同じクラスなんだしよ」
「そうだけれども…」

がちゃん、と机を合わしてきたのはジャッカル桑原くんである。異国情緒溢れる名前だ。たぶんジャッカルが名前だろうけれど、なんというか…すごい。いろいろと。

「佐藤って演劇部だったんだな」
「まあ…」
「オリエンテーションでなんかやってただろ?びっくりしたぜ、あれ。なんか演劇って感じじゃないじゃん佐藤って」
「うん…」
「あ、悪い。貶すとかそういうつもりじゃねぇんだけど…なんて言うか意外?っての?おとなしー感じするし」

パンの袋をあけてひたすら食べていく桑原くんを横目に、私は生返事で返しながら卵焼きをつついていた。本来一緒に食べる友達は妙な気を利かせて、これまた妙な視線を私に送っている。一体どうしたの?とでもいいたそうな視線。そんなの私が知りたい。

「ところでよ、こっからが本題なんだけど」
「そ、そうなの?」
「ぶっちゃけ佐藤って真田とどういう関係なの?」
「へえ!?」

箸からぽろりと唐揚げが落ちた。というか箸ごと落ちた。なんでそんな桑原くんが驚いた顔をしてるの…こっちのが驚いたよ…

「というかなんで真田くん!?」



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