「……あれ?」

設定しておいた時計のベルを解除し、それっぽく背伸びをする。
今日は始業式。私の中学校生活最後の年が始まる。特に楽しみというわけでもないし、この最後の一年で何かが大きく変わるわけでもないっていうのは充分わかっている。
いや、変わるかもしれない。一応三年生、だし。でもあまり深くは考えていないっていうのが本音。付属中学だから成績がとんでもなくひどくないなら大丈夫だろうし。

「早いわね、学校楽しみだったの?」
「んーん、そうでもない。つい癖で起きちゃった」

リビングに行き、お母さんとどうでもいい話をして朝ごはんを食べる。学校はキライじゃないけど好きでもない。家で寝ている方が好き。朝早く起きるのだって、本当は得意じゃない。……癖とは恐ろしいもので、学校があると思った途端に早起きしてしまう。朝練なんでまだ先なのになぁ。

「いってきまぁす!」

ローファーがカツン、と地面を蹴りあげる。桜は見頃を過ぎて散り、通学路を淡く染める。人気は少ない。やっぱりそれなりに早いといつもは賑やかな通学路もしんとしている。

学校についてもそれは変わらないみたいで。校門をくぐり、見渡しても前も後ろも、まだ誰もいない。まさか、本当に早すぎた?ケータイで時間を確認すると朝6時45分……早い。思ったより早すぎる。鞄から始業式のプリントを取り出し(思った通りぐちゃぐちゃ)確認する。……開始よりも1時間以上早い。

「ちぇっ……もう少し寝てればよかったかなぁ」


そうつぶやき、鞄にプリントをしまおうとし、

「あっ!」

……っぶない!飛ばされるところだった。ビュンと音を立てて走り去っていった風からプリントを守り、元にあったようにカバンに詰め込む。手櫛で髪を整えで、玄関に向かう。
はぁ、なんてため息が漏れる。妙に視線を感じ、ふと振り返ると少し離れたところに人がポツリと立っている。立っているだけで妙な存在感がある男の子だ。あまり、男の子って雰囲気じゃないのだけれど……。ばちり。視線が噛み合う。どうしてか逸らせなかった。彼は確か、同じ学年の……名前は知らないけれど、たしかテニス部で……。

びゅん!

風が吹いた。桜はもう散っていて、風に乗って花びらが舞う。その中で見えた彼は、なんだかとても、キレイに見えた。



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