真田くんに体を起こされて、きっと怒られるんだろうなあと思いながら事のあらましを説明すると、私の予想を反して、真田くんは私の頭を撫でてちょっと困った顔で私を見つめた。…汗かいてるから、今は頭、ちょっと触らないで欲しいなあ。

「怪我は」
「ないと思うけど…膝がちょっと痛い」
「赤くなってるな、立てるか?」
「う、うん。転んじゃっただけだし」

あれ?なんだか変な感じ?優しい真田くんに違和感って失礼な話だけれど、ここって多分いつもなら「たるんどる!」が飛んでくる場面なのに。

「真田くんどうしたの?具合でも悪いの?」

気になりすぎる、真田くんがいつもより変なのはやだよ。私が好きなのは自分にもみんなにも厳しくて、けれどたまに、ほんの少しだけれど優しさを見せる。そんな真田くんだから……ってあー!何考えてるんだよ私!

「い、いや。そういうわけではないのだが」
「ならなんで?いつもの真田くんならここで叱咤が飛んでくると思うんだけどな」
「やはりそう思われているのか…」
「え?え?」

目に見えて落ち込む真田くんに、余計訳がわからない。なんで今、落ち込むところがあったの?わかんないよ…けれど、なにかに悩んでいるのなら私が力になりたい、なんて思っちゃうのは…いいよね?一応私達は友達なのだから。

「たるんどるぞ!真田!何に気を落としているのかはわからん!が、そんなことは相談すれば良いだろう!このッバカタレが!」
「な…んだ…それは」
「…私達は友達、でしょう?悩みでもなんでも、気になっちゃうよ。真田くんてばなんかおかしいし、私はいつもの真田くんの方が……好き、だよ」

真田くんの真似をして、逆に叱咤を入れて……そしてついでに、ちょっとアピールをぶっ込む。いいじゃんか、恋と戦争に手段はないんだもんね!ただ私は素直に真田くんへの思いを!そう、伝えただけだもの。

「お前は、いつもほしい言葉を言ってくれるんだな」
「ええー?そうかな、私、できてる?」
「ああ。確かに今の俺は、どうしようもなくおかしいのだろう」
「…私も一緒だよ、最近の私ってばすごくおかしいの。だからこうやって体力づくりなんて言ってね、煩悩を消してる」

私の言葉に真田くんは吹き出して、その後きりっとした顔でそれもいいな、なんて言い、立ち上がった。つられて私も立ち上がる。

「俺の悩みは、なんと言えば良いのか…説明できない。消そうと思い走ってたり、なにかをしている度にその悩みは出てくる」
「そういうものだと思うよ。だから悩んでるんじゃん。とりあえず、私の場合はね、悩みはもう、そのままにしておくことにしたの」
「解決せずにか?」
「解決しなくって、曖昧なままなのもちょっと悪くないの。苦しいけど、少し楽しくもある。…ただ次の扉を開ける勇気がないだけなんだけどね」

真田くんに扉を開けて欲しくって、なんて。ちょっと劇のセリフみたい。私の思いは、もう消せないと思うから。だからその分苦しいし、私ってば馬鹿だから直接的なことしか考えられなくて。でもこうやって真田くんといると嬉しくて楽しくて、たまらなくなるの。


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