慌てて口を押さえて、地面に視線を合わした。私今、なんて言った?好き…と、確かにそう紡いだ。意識した瞬間頬が、体中が熱くなる。否定したくても言葉にならない声出て、口元は押えているのにぽろぽろと音がこぼれ落ちる。

「あ、う、えと、」
「今、なんと…?」
「わっわたし、その、これは」
「佐藤、俺は」

すっと真田くんの腕が伸びてきて、私の髪に優しく触れた。指通り悪くないかな、なんて的外れなことを考えていると、耳に彼の指が当たって思わず情けない声が飛び出る。何をやってるのか、もう訳がわからない。

「あ、あのっ真田く…」

勢いのまま顔を上げると握りこぶし一個あるかないかの距離に、真田くんの顔がある。びっくりとドキドキで、何を言おうとしたのか分からなくなるくらい、頭の中が真っ白だ。ひゅうと喉から空気が漏れる。離れようとしても真田くんがわたしの頭をホールドするのでできない。

「お前のことがす」
「ごめんなさいっ!」
「えっ」
「わ、私なんてこと言っちゃったんだろ、というかその、これは、友達として好きと言う意味で、ええと、深い意味じゃないからね!?あの、私ごめん!主語が抜けてわかりにくくって、うー、あーっと…私、だから、そのっ


私の真田くんへの好きは、ずっとずっと、友達としての好きだからっ!」


言葉を遮ったのが悪かったのか、一気にまくし立てたのが悪かったのか…真田くんはポカーンとして私を見つめたあと、ブルブルと震えて、般若のような顔をして小さくそうか、とつぶやいた。

「あ、あの…真田くん、私悪いこと言っちゃった…かな?」
「いや、何も言ってない」
「それじゃあ、その、言葉遮っちゃったの…ごめん…?」
「それも、いい。今考えればそれでよかったのだからな」

真田くんの般若顔は治らず、私の顔の赤みも取れず、さらに言えば真田くんはまだ私の頭を固定したままだし、顔の距離は近いしで、緊張なのかなんなのか心臓はさっきからデッドヒートでバーニングだ。どういう状況なのか脳みそがついていけない。
どことなく遠い目をした真田くんに私は何を言えばいいのかわからずに、ただ自分の言った"好き"という言葉が心の中で大きく揺れていた。



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