「そういえば、どうして佐藤は大会があると知っていたんだ?」
「は?」
「…言っていただろう。俺がここに来ようとせず教室へ向かおうとした時、大会があるのなら保健室に行け、と」
「…そういえば、そんなことも」

私が怒っているのか恥ずかしいだけなのか、このよくわからない感情と必死に戦っていると、真田くんは何も気にしていない様子で私に訪ねた。
その態度が、どうしようもなくムカつく。私はこんなにも意識しているのに、何も知らないからって、だからって、ずるい。

「友達に聞いたの」
「…ジャッカルか?」
「…なんでそこにジャッカルくんが出てくるの」

機嫌が悪そうに答えたからか、私に謝り、肩を落とす真田くんを見て心が痛む。…仕方ない、そう、仕方ないじゃん。むしろよかったかもしれないもん、もし覚えていたら真田くんともっと気まずくなっていたのは明白。ならいっそのこと私だけの秘密にしよう。記憶の奥底にしまいこんで、鍵をかけてしまえばいい。そうすれば私だって、こんな意識しないでお話できるだろうから。

「さ、真田くん…私ね、応援してるから」
「そうか、ありがたい」
「きっと…頑張れなんて言わなくても真田くんはいつも頑張ってると思うから。だから私は真田くんがいい試合ができるように祈ってるよ」

できるだけ意識しないように、まだ顔は熱いけれど、そんなのはもういい。最後ら辺は早口になってしまったけれど言いたいことは全部言えた。
ふと真田くんを見れば、驚いた顔をして私を見ている。そんなに変なことを言ったつもりはないんだけど…ただその姿にひとつ、リンクするものなあった。彼はああ言ったけど、真田くんが嬉しいとは、思わないだろうなぁ。

「真田くん、私、少し寂しかった」
「…なにがだ?」
「何も知らないんだなって、思ったの。真田くんのことも、大会のことも、全然知らない。それが、寂しかった」

散々避けていたくせに、何を。確かにそうだけど、これはずっと思ってた。知らないというのが寂しくて、悲しくて、私と彼の関係ですらわからない、それって変な話だ。

「…なぜ」
「え?」
「…なぜ、そう思う」
「だって私は、」

真田くんの疑問が私を貫く。たしかにそうだ。彼からしたらこんなこと、どうでもいいかもしれない。今更。そう思ってるかも。たとえそうでも、これだけは言いたい。だって私は真田くんと、友達なんだ。

「私は、真田くんが好きだから」




prevnext

サイトTOPへ
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -