制服が夏服に変わって少し経った。私と真田くんの関係はあれから大きく変わり、ある意味一つの悩みの種となっている。

「さ、真田くん」
「佐藤、か」
「今日は、その…天気がいいね」
「そうだな、もう夏も近い。熱中症には気を付けなければならんな」
「うん」
「……」
「……」
「……」

(見合いの席みたいな会話…)

あれからというものの、真田くんとの会話のキャッチボールが続かないのだ。私が勝手に思い出して、意識しているだけなのだけど…真田くんを見るとなんだか妙に恥ずかしくて、困る。どうにか現状を打破したくても、あいにく私にはいい案がない。





次の準備をしていると隣のクラスの子から辞書を貸して、と頼まれた。いいよと返事をしロッカーを開ける。「あ」ふとその子が声をあげたのでそちらを見れば、そういえば…なんて接続詞と共にクラスにいるジャッカルくんをぼんやりと見ながら続ける。

「テニス部、関東大会進出だって」
「へぇ、そうなんだ」
「もしかして、今知ったの?」
「…そうだよ?」
「マジ?あんたよくテニス部と話してるじゃん。なのにそんなことも知らないの?」

ぐっと息が詰まった。私はテニス部の人(と言っても数人)と友達…だと思う。少なくとも私はそう思ってるし、彼らもそう思ってると願いたい。けれど、私は彼らのことは良く知らない。立海のテニス部がとても強いということと全国優勝した、ということは知ってる。でも、それだけ。それ以上のことは、私は知らない。なんか、それって……






「ね、ジャッカルくん」

もう何回行われたのかわからないジャッカルくんとのお昼。少し焦げている卵焼きをつつきながら、目の前の彼に話しかける。

「関東大会出場おめでとう。友達から聞いたの、ごめんね、情報遅くって」
「サンキュー。まあ、でかでかと発表されるわけでもねぇし気にすんなよ」
「…でもね、ちょっと寂しかったの」

私の言葉にジャッカルくんは驚いた顔をして、そのあと「なにが?」と聞いた。あまりにも驚いた声をしていたので、変なことを言ったのか不安になる。

「え、えと…私、友達なのに何も知らないなって。そう思ったら…なんだか寂しくて」
「…そうか」
「…あの、私…変なこと言っちゃったかな?」
「いや、なんか嬉しいかも、そういうの。友達って言ってくれるとは思わなかったし」
「えっ!?」

今度は私が驚いた声を出した。驚いた、というよりは焦った声が出たのだけれど…

「わ、私達って友達じゃないの…?」
「あっいや!そう言う意味じゃなくって、俺も佐藤のことは友達って思ってるけど…でも口に出したりしないだろ、お互い。だからそう言ってもらえると嬉しいっていうか…」
「ほんとに!?あ、あー…よかった…」

ここで友達じゃない、なんて言われたら心が砕け散るところだった。泣く。爽やかな微笑みを浮かべたジャッカルくんを見て、胸をなでおろす。中断させていたご飯を再開させよっと。唐揚げを口に入れると、ジャッカルくんが先ほどの爽やかさはどこにやったのか、ニヤニヤしながら、真田、と言った。おもわず箸を思い切り噛んでしまい、奥歯が痛い。

「さっ…真田くんが、なに?」
「真田にも言ってやれよ、それ。喜ぶから」
「……そんなことないよ」


あの真田くんが、まさか。




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