「あ、や、やだ…私ったら飲み物、落としちゃって…」

野菜ジュースを拾って真田くんを見上げると、これでもかというくらい、顔が赤かった。もしや、もしやさっきの言葉は、わたしの聞き間違いとか、そういうのじゃないの……?

「…佐藤」
「さ、真田くん?」

ふと、前にジャッカルくんが言っていたことを思い出してしまった。もしかして、真田くんは、わ、わた、私のことを…?そう考えると心臓がギュッとした。うわ、これ絶対に顔赤いよね、恥ずかしい、ドキドキするし、なんか私が私じゃないみたいだ。

「お、俺は!」
「はっはい!」
「俺は!そのだな、佐藤の、そのような考えが、そう!好きだと!そう言っているのだ!」
「…え…?……あ、ああっ!うん!うん、そうだよね!あは、あはは…」

チクショウ!そりゃあそうだろうけれど、そうだけれども!真田くんが私にそういうふうに思うこと自体、ありえないよね!忘れよう!もう、このことは、忘れよう…私はなんて、はっずかしいことを考えていたんだろ……

「あはははは……」
「ふはははは……」

二人で変な笑い方をして、どちらが言ったわけでもなく、この場から去った。正直なところ真田くんにどんな顔をして会えばいいのか、わからない。持っている飲み物たちは、もうぬるくなっていた。










「弦一郎そんな顔をして歩くな。周りが怯えている」
「…柳か」

ひとしきり笑いあった(悪い意味でだ)あと、俺は佐藤と別れ、食堂へ向かっていた。手の中の飲み物を、佐藤からもらったそれを見ると、体温が上昇するのがわかる。たるんどるぞ、真田弦一郎!今俺は女子にうつつを抜かしている暇などないというのに!……そう考えていたのが、どうやら顔に出ていたらしい。周りを見れば皆、俺から目をそらした。

「先ほどから見ていたがなんなんだあれは」
「ちょっとまて柳、先ほど…だと?」
「ん?ああ…お前が佐藤に話しかけられるところからだな」
「はっ初めからではないか!?」
「よほど夢中になっていたようだな、お前の視界に入っていたというのに全く気づいていなかったのか」

ノートを片手に興味深いな、と呟く柳にゾッとした。こいつの有能さはよく知っている。だからこそ恐ろしい。俺が、俺がもしも、佐藤を好いているということがバレたとしたら…

「他に何か良い誤魔化し方はなかったのか弦一郎。あれでは佐藤も困っていた。もう少し自身の好意を隠しながらだな…」

我が立海の参謀は有能だ。…身を持って体験するのは、避けたいところなのだが、どうやらそういうわけにも行かないらしい。ちゃぽん。スポーツドリンクが音を立てる。あの時の佐藤は、俺の今まで見たものよりも、たまらん顔を、していた。




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