がちゃごん

お金を入れてボタンを押すと、CMでよく選ばれたのはとかなんとか言っているお茶が出てきた。

「……」

お昼休みに自動販売機を占領するのもどうかと思ったけれど、あと少し待って欲しい。硬貨を入れてコーヒーのボタンを押した。





「あ、いたいた!真田くん!」

左手にパシリの如く飲み物を5本ほど抱き抱え、ぶんぶんと腕を振って真田くんに話しかける。どこかへ行く途中なのかな?お弁当を持っていないところを見ると食堂でご飯?

「…佐藤」
「あの、昨日はありがとう。私知らない人が沢山いるの、ちょっと苦手で…タイマンなら割と平気なんだけどね?あっ!でも舞台の上とかじゃ全然平気で……真田くん?」
「…っああ。すまない、少し考え事をしていた。で、なんだ?そのたくさんの飲み物は。まさか一人で飲むのではないだろう?」

あの真田くんが人の話を聞いていないって、なんか珍しい。よっぽど難しい宿題でもあるのか。…もしそうだったら近々私もそれに頭を抱えることになるのか、うーん困る。

「うん、あのね真田くんにお礼をしようと思って…でも真田くんの好みがわからなかったからとりあえず定番のお茶、コーヒー派だったりして…と思ったからコーヒーもあるし運動部だからスポーツドリンクでしょ、それで甘いのが好きかもしれないと思っていちごみるくに健康志向の野菜ジュースもあるよ」

もしも全部断られた時用に、全部私が飲めるものだ。お財布は泣いているけれど、真田くんに喜んでもらえたら私はそれで十分。
結局あの後たくさん考えたけれど良い案は思い浮かばなかった。なのでジャッカルくんが言っていたことをそのまま使わせてもらったのだ。安上がりで申し訳ない。

「……ひとつ聞いていいか」
「ん?なにかな?」
「なんでそんなたくさん買ったんだ」
「いやだから真田くんが何を好きかなーってずっと考えていたんだけれど」
「ちょっとまて、…ずっと?」
「うん」

私がそう言うと真田くんはほんのり頬を染めて斜め上に視線をそらした。真田くんは、実は照れ屋なのかもしれないと思ったのはここ最近のこと。ぶっちゃけどこに照れる要素があるのかは謎だけも、真田くんが顔を赤くして視線をそらすのは割とあることで。今までは突っ込まないでいたけれど、なんとなく聞いてみることにした。

「真田くん、照れてる?」
「!? こ、この真田弦一郎照れてなどいない!!」
「わざわざフルネームで言わなくても…。なら、暑いの?顔赤いよ?」
「…そうかもしれんな」

思わずクスクス笑うと、真田くんはバツが悪そうに眉をひそめた。やっぱり図星なんだなぁ。見かけによらず(っていったらひどいかな?)わりと可愛いところもあるだね、真田くん。

「なら、飲み物もらってくれると嬉しいな。買ったばかりだしそれなりに冷たいよ。好きなだけ持っていっていいから」
「しかしだな」
「とりあえず…お茶と、スポーツドリンク。これは飲めるでしょ?はいどうぞ」

真田くんの手に飲み物を無理やり握らせていく。やめろ、と制止させようとする声が聞こえるけれど、そう言うだけで実際には何もしてこないから簡単に真田くんに飲み物を渡す(というか押し付ける)ことができた。

「もっと飲む?好きなのあったら言ってね?」
「いや、これを貰うのすら抵抗感があるというのにこれ以上貰うわけにはいかん」
「別にいいんだけどなぁ」
「そ、それよりもだな。ひとつ、聞きたいことがあるのだが」

飲み物を持たせようとした私を制止する時よりもずっと真剣な目で見てくるので、ドキリとする。なんだか目が逸らせない。真田くんはたまにこうやってドキドキすることをしてくるから困る。上擦りそうになりながらも、なんとかいつものように声を出す。

「え…と、なにかな?」
「ジャッカルとは、どういう関係…なんだ?」

ああ、デジャヴってこういうことをいうんだなぁ…。


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