「すっすみませぇん!あの!ジャッカルくんい…ま……す、か……」

やはりというべきか、部室のドアを叩いたのは俺も知る佐藤であった。初めこそ威勢のよかった佐藤は部員たちを見るやいなや、ガタガタと震えだし目を見開いたのだ。顔を真っ白にして。


「み、みなさん、おそろいで…その、ええと…背が、お高いんです、ね…はは…あはは……」

正直見てられないと思った。顔色は白を通り越して青に近づいていたし、目は見開いたまま白目になっている。泡でも吹いて倒れる勢いだ。言っていることも訳がわからん。

(そういえば)

前に人前で歌うのが苦手と言っていたが、歌うのというより人前が苦手なのではないか。演劇部にとっては致命的すぎる弱点である。
彼女を呼び出した本人は扉付近に集まっている者たちの後ろに立ち、笑いを堪えているようだった。とりあえず佐藤にそれを伝えてやろう。

「佐藤」
「はいっ!佐藤です!どうもすみませんでしたあっ!」

微塵も動かず(いや、震えているという意味では動いているのか?)、その場で白目のまま応答する佐藤は相当参っているというのが目に見えてわかった。

(これはひどいな)

「だ、大丈夫か?いつもより顔色が悪いように見えるが。…ジャッカルならそこにいるぞ」
「真田くんっ!?あ、ああ、そうだった!真田くん副部長だったね、あの、ありがとね!」

びくんと体を震わせこちらを見た佐藤は、先程よりも顔色が良く見えた。目も元に戻ったようだ。随分と安心した顔をしている。どうやら正気に戻ったらしい。
駆け足でジャッカルに近づき、ノートを渡す佐藤はいつもの彼女だ。

「次はないよ?」

ジャッカルにそう言った佐藤は困ったように笑った。振り返り、俺と目が合うと、ひどく綺麗に笑うのだった。

「また、助けてもらっちゃったね。いつもありがとう、真田くん」






「真田先輩!なんすか今の人!どっちかの彼女っすか!?」
「かの…っ!?」
「なるほど、その反応から見て真田が佐藤に気がある確率93%」
「た、たわけがーーーっ!!たるんどるぞキサマら!」
「なあジャッカル、この前疑って悪かったな」
「だからマジって言ったろ」

なにが、なにが気がある……だ!そんなことにうつつを抜かしていられる時期でも無いだろうが!

「たるんどる!」


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