プリズムサイバーグラフィック

私のクラスは少し不穏である。何と言うか…学年の問題児をまるごと教室に押し込めたような、そんな感じで、楽しいといえば楽しいのだけれど天井に人が埋まっていたりメガネ狩りがあったりする。怖い。
そんなクラスの中、私はまあ普通かな?という立ち位置なクラスの一員として溶け込んでいる。だから私と同じような立場の人には自然とシンパシーを感じていて、私の友達とか、男子で言えば喜多川くんとか…だから、そうだから、私はかなり驚いているのだ。


「漫画のためだと思って!!」


えええええ!?喜多川くん漫画描くの!?というか、それでポーズを頼んでいるのって、あの藤原さんじゃないか…!昼休み、購買に飲み物を買いに行ったらこれだ。なにこれ、喜多川くん…勇気ある…
藤原さんは快く引き受けてるし、喜多川くんはスケッチブックを持って嬉しそうにお礼を言っていて。ひええ…喜多川くん…すごいな、私藤原さんに話しかけるの無理。怖いし取って食べられそう。


「ナマエおかえり!あ、それ新しいやつ?」
「うん、思わずこれにしちゃったの。飲む?」
「飲む飲む!」


飲みかけていた飲み物を友達に渡して、ちらりと喜多川くんの方を見る。すごい速さでしゃこしゃことシャーペンを走らせているので、すごいとしか言い様がない。喜多川くん本当に漫画家になれちゃうかもしれないなぁ…と思ってモデルをやっていた藤原さんの方を見る。


「ッぐ…!えほっえほっ!!」
「うわっ、どうしたの平気?」
「はッ…はあ……うん、平気、ちょっとむせただけだから」


なんちゅうポーズを藤原さんに…というか女子にとらせてるんだ!!面白すぎて笑いそうになるのを必死にこらえ、お弁当の蓋を開ける。恐ろしい光景が広がっているであろう方向には目をくれず、お腹減ったなー、なんて言ってごまかした。さてまずは卵焼きから…と、オカズを口に運ぼうとした瞬間、藤原さんの叫び声が聞こえた。


「何がマドモアゼルゆみこだっつーの!ふざけんなよミッキー!」
「まど…え?」


マドモアゼル、ゆみこ?なぜその名前がここで。ふと自室の机に並んだマドモアゼルゆみこの漫画を思い出した。名前が変だからと手に取り、まんまと好きになった、あのマドモアゼルゆみこ先生…?誰が?もしかして、もしかして喜多川くんがマドモアゼルゆみこ先生だというのか。嘘でしょう、マド先生は少女漫画家で、あんな可愛い絵を描く人が、男で…しかも同じクラスの男?ありえない…きっと藤原さんがマドモアゼルゆみこ先生なんだ、そっちの方がまだ納得できるもの。


「仕方ないだろ、ネタに困ってるんだから!」
「やっぱお前か!」


小さな声で思わずつっこんでしまった。頭が痛い。大丈夫?私の飲み物を差し出して心配そうにのぞき込む友人に礼を言って、一口だけそれを飲む。頭が混乱してよくはわからないのだけれど、ただ一つだけよくわかったことは…喜多川くんは私と同じタイプの人間ではないらしい、ということだけだった。




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