▼ この先が見えない
結局バイトに休みの連絡を入れて、一日寝て過ごすことにした。なんせどこもかしこも痛いのでそれどころじゃない。世の中の非処女に敬服する。いや、私の仕方がおかしかったのかもしれないけどね!覚えてねぇけど! あのあと、バイトに連絡をした私は何も食べずに布団にくるまっていた。そうしたら驚くほどぐっすりと眠れて、目覚まし時計を見ると夕方、昼寝には寝すぎた気がする。少し伸びをすれば二日酔いもさっぱり消え、頭も意識もスッキリだ。
「そうだ、昨日多分サークルの人達に迷惑かけちゃったよね…」
飲んだくれて橘に連れて帰ってもらったくらいなのだから、相当酔っていたに違いない。グループチャットに謝りを入れておかないと。ケータイを取って電源を入れ…ん?入らない…切れちゃったのかな?充電をしている間に歯を磨いて、顔を洗って、ついでに水をいっぱい飲む。ううーん、染み渡るな…。ケータイの電源をつけてみると来るは来るは大量の通知。昨日はごめんねとコメントを入れると、ケータイがぶるぶる震え出す。返信早いなぁ、と思ったけど違う、これ電話だ。しかも、た、たちばな…
「も、もしもし…?」 『大丈夫か』 「え?なにが?」
なんのこっちゃ。話を聞いてみると、どうやら私のバイト先であるカラオケ店に後輩を連れて行ったら働いているはずの私がいなかったから心配した…らしい。
「大丈夫だよ、お風呂入ったらクラッときたから休んだの。二日酔いもあったしね」 『今は?』 「平気。ずっと寝てたからぴんぴんしてる」 『昨日はいろいろと無理をさせたてすまん…本当に平気なのか?』
平気、そういうわけじゃないけれど…もし私が平気じゃないと言ったら橘はどうするんだろう。会いたいと言ったら会ってくれるの?単なるセフレに?胸が苦しくなる。
「橘」 『どうした』 「…抱いて欲しいの」 『お前、なにを…』 「今すぐ会って、抱いて欲しい。そうしたら私…きっと、平気になるから」
橘の今から行く、という言葉で電話は切れた。橘って私の部屋知ってたっけ?前に一度サークルの人数名と橘がきたことあるような気がするけれどかなり前の話だ。これから私の部屋に橘がやってくる。そして多分、セックスをする。モヤモヤした気持ちを抑えきれなくて思考回路はぐしゃぐしゃだ。 しばらくすると呼び鈴がなる。スコープから見るとやはり橘で、もう来たんだ、なんて思いながらドアを開けると何とも言えない顔をした橘が立っていた。
「よく来れたね、っていうか汗だくじゃん。シャワー浴びる?」 「名前、俺は」 「…ほら、とりあえず中に入ろ?それからだよ」
橘がちょっと遠く感じる。そう感じさせるきっかけを作ったのは、きっと私だ。
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