▼ 震えて砕けた


バイトがあるからと帰ってきたはいいけれど、私はこれからどうしたらいいんだろう。サークルで一番慕ってくれた後輩と肉体関係になり、元々彼に恋愛感情を持っていた私からすれば嬉しいような嬉しくないような…


「よろしくって言われても、何をヨロシクするのよ、ナニを…」


橘の家から出て、最寄りの駅まで送られた私達に会話はなく…怖くて何も聞けなかった。既に関係は崩壊しているも同然だけれど話を聞いてしまったら私と橘は、もうどうしようもなくなってしまう。
「これからよろしく頼む」
別れ際に聞いた橘の言葉がひどく頭を悩ませる。これからよろしく頼むって、セックスの相手を?つまり私達はセフレになったということ?記憶がないからなんとも言えないけれど、多分そういうことなんだろう。だから橘の私に対する口調が変わったのだろう。


「初カレより先に初セフレって…」




風呂に入ったらどっと疲れが湧いてきて、腰もお腹の中も胸の奥もなんだか痛くて、わんわんと子供みたいに泣いた。色気のない泣き方をする女だ。
好きな人とセックスをしても、その後はひどく辛いもので、少女漫画だとかエロ漫画だとかはみんな嘘つきなんだな…なんて考えながら体を洗う。抱かれると知っていたならもっとましな下着をつけて無駄毛の処理だってもう少し丁寧にやったのに…
鏡の向こうの私はひどい顔をしている。今にも死にそうな、そんな…。シャワーで泡を流して上がろうか、というところで違和感に気がつく。


「えっ…?」


胸元のところにある、赤いアザみたいなこれ…もしかしてキスマーク…?顔が熱くなっていくのがわかる。早く出ないとのぼせそうだ。そんな、セックスをしたってわかった時はあんなに悲しかったのに、セフレになったと考えがまとまっときは泣くほど辛かったのに、キスマークが、うれしいなんて。

風呂から出て酒を飲みたい気持ちになったので冷蔵庫を見てみるも、下戸な私が常備してるわけもなく、仕方なしに台所の調理酒を飲んだらそのまま吐き出した。飲めるわけないのに何やってるんだろう。ねえ橘。どうしよう私、今あんたにすごく会いたい。次に二人で会うときはセックスをするときなのかな。もうそれでもいいから、とにかく会って抱きしめて欲しいよ、橘…



第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -