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▼ かわいいひと

※初めに完結置き場にある元の方を見るのをおすすめします



「来たぞ」
「な、なんで弦ちゃんがここに…」


一人暮らしをして1ヶ月、段々と家事やら大学やらになれてきた頃に弦ちゃんはやってきた。ふてぶてしい態度の彼氏である。手土産だと渡された高そうなお菓子を受け取り、中に通すと、訪ねてきたくせに少し気まずそうに部屋に入ってくもんで思わず笑ってしまう。


「別に来るのはいいんだけどさ、もし私が部屋にいなかったらどうしてたの?」
「…考えてなかったな」
「無鉄砲すぎるよ…」
「お前に会いたかったから、そういう考えが浮かばなかった」
「真顔でそう言う事いうのやめてよね…」


弦ちゃんとお付き合いを初めてもう少しで半年が経つ。私は大学生になって弦ちゃんは高校生になった。その間によく知ることとなったのだけれど、弦ちゃんは簡単に思ったことを口に出す。恥ずかしがりもせず、ただ当たり前だろうという顔で言うものだから私からすると参ってしまうのだけれど。
弦ちゃんを座布団に座るように促して、その間にお茶と先ほどもらった手土産を出す準備をする。手土産のリボンを解くと私の好きなお菓子が詰まっていて、さすが幼馴染み、よく私のことをわかってる。


「今度来るときはさ、ちゃんと連絡してよ」
「いいのか?」
「え?なんで?」
「突然来て迷惑じゃなかったか?だから、もう来るなと言われるかと思った」
「言うわけないじゃん。どうしてまた恋人にそんなこと言う必要があるのよ」
「恋人…そうだな、なまえもまた俺の家に来ればいい。突然でもなんでも構わない」
「それはどうも」


ついでに、弦ちゃんの扱い方も少しわかってきた。弦ちゃんは「恋人」だとか「彼氏」なんて言葉に弱い。私がその単語を口にすると少しだけど口角が上がり機嫌も良くなる。強面な顔とは裏腹に可愛いやつである。


「でもほんと、よく来たよ。行けない距離じゃないけれどさ…東京まで来るの大変だったでしょ?」
「別にどうということもない。ただ…そうだな、思い知らされた」
「はぁ?何言ってるの?」
「お前が年上だということをだ」

何を今更。ポットから湯を注ぎ、お茶を出すも弦ちゃんは手をつけることなく、隣に座った私をしっかりと見つめている。あれ、弦ちゃんまた背が伸びた?ぐんぐんと伸びていく弦ちゃんとは逆に、私は身長が縮んだというのに。羨ましい。


「置いていかないでくれ」
「え?」
「お前はいつも俺の先にいて、追いかけるばかりだ」


随分と詩的な表現をするものだ。高校生と大学生という年の差は、さほど大きなものではないと思う。実際のところ私はあまり気にしてないし、年の差なんてどうでもいいと思ってもいる。でもこの恋人さんはずいぶんと気にしているようだ。…まあ、私がずっと弟扱いしていたからかもしれないんだけど。


「弦ちゃんはもう、追いついたでしょ?私の隣にいるじゃない」
「なまえ」
「むしろ逆よ、弦ちゃんまた大きくなっちゃってさ。私を置いてかないでね、ただでさえ弦ちゃんは歩くの早いし足も長いんだから」
「お前をおいていくわけ無いだろう」
「うん、私もだよ」


置いていかれるとしたら、それは私のほうだ。弦ちゃんの方が若いし、出会いも沢山ある。弦ちゃんと同じ年齢の女の子からすれば私はオバサンなのかもしれない。うーん、寂しい。


「そうだ、弦ちゃんにいいものあげる」


立ち上がり机の引き出しをあけ、目当てのモノを取り出す。さっき弦ちゃんからもらった手土産のリボンを穴に通して彼に渡すと、わからなそうな顔のあとにハッとした表情を見せて、大きな手で恐る恐る受け取った。


「いいのか、もらっても」
「いいから渡したの、いつでもおいで。これなら私がいなくても部屋の中で待ってられるでしょ」
「…そうだな」


本当に大切そうにカギを握り締めるので、それが可愛くて、思わず弦ちゃんのほっぺにキスをした。びっくりした顔の彼だったけれど、私に手を伸ばしてカギと同じくらい…いや、それ以上に大切そうに私を抱きしめて来たので、この可愛い恋人がずっと傍にいたらいいな、なんて考えが私の頭をぐんぐんと埋めていくのであった。
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