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▼ 溶かしつくして

黒羽くんとToLOVEった次の日、恐る恐る私が彼に挨拶をするとニコニコ笑顔で返してくれた…のだが。


「昨日二人が水道の前で抱き合って…」
「え?押し倒してたんでしょ?」
「やだ、あの二人付き合ってたの!?大胆すぎでしょ!」


クラスからの視線が痛いです。確かにあんな人通りの多いところでやらかしてしまったのだから仕方がないと言えば仕方がないのだけれど…なんともいたたまれない気持ちである。彼と噂になるのはいいけど、でもその代わりに迷惑がかかるのならたまったものじゃない。


「悪い」
「え?」
「こんなんになっちまって」
「…ううん、平気だよ。私こそごめんね、こんなことになって…」


少し小さな声で言い合えば、黒羽くんは気にするなと言って私の頭を軽く、手を置くみたいにして撫でた。たとえクラスの女子私達のことでが盛り上がっていようとも、男子が私の昨日穿いていたパンツの色でこそこそ密談していてもしていても、これだけでもう今日は頑張れるよ…でも明日はわからないから明日も頭撫でてね…そんなこと言えないけど…。








「やっぱりでかいなぁ」
「そりゃあんたの人選ミスよ、なんで身長差も考えずにジャージ借りたの?」
「だって…」


お尻まですっぽり隠れたシャツを見た友達が笑いながら背中をバシバシと叩いてくる。痛い。
体育があるのをすっかりと忘れていた私は、隣のクラスからジャージを借りたのだが…その借りた女の子が学年一背の高い子で、とにかくでかい。だっぼだぼだ。上も下もサイズがあってないけれど、減点されるよりはましだ。


「おいみょうじ、ジャージ忘れたのか。罰として後片付けはお前やれ」


神は無慈悲である。






「うう…なんでみんな片付けていかないのよ…」


ボールを拾いながら汗を拭う。あ、暑い…真夏の太陽が容赦なく私に襲いかかっている…どうせ次は昼休みだし時間がかかってもいいけれど、でも面倒だし暑い。体育がソフトボールだったためそのボールをすべて拾い集めればいけないし、四方八方に飛んでいてキリがない。


「みょうじ」
「え、黒羽くん?」
「手伝う。こんなあちぃのにお前一人じゃ大変だろ」
「ありがと…すごく助かる…!」


神様ありがとう、無慈悲とかいってごめん。というかむしろ黒羽くんが神様なんじゃないか。私からカゴを奪い取り(重いからって持ってくれた…優しい…)一緒にボールを拾ってくれる彼をちら見すると首元の汗をシャツで拭っていて、くっ黒羽くん、お、おへそ見えてるよ…!お腹周りもきゅっとしてて私とは比べ物にならないし、日差しの当たってる部分と影になっている部分のコントラストが眩しくて頭がくらくらする。ってうわあ!それ以上シャツ上げるとむね、胸が見え、


「みょうじ?」
「うわあああ!!ごめんなさい!!」
「ん?あ、そのボールとってくれ」
「はい!はい!今取ります!!」


な、何考えてたんだ私は…!慌てて足元のボールを拾い、彼に差し出す。が、しかし、黒羽くんは一向に受け取ってくれないし無反応だ。もしや私のいかがわしい視線に気がついていたの…ッ!?


「く、黒羽くん!」
「っうお!?」
「あの、ジロジロ見てご」
「みょうじ!」
「はいっ!?」
「わりぃ、その、確かにお前の言う通りで、いやでもつい見えちまって!それで俺、ええとスマン!!」
「…なにが?」
「は?」


なんのこっちゃ。首をかしげる私と同じように訳のわからな言って顔をする黒羽くん。もしかして私の視線に気がついたとか、そういうんじゃないんだろうか…


「あー…えっと、お前さ、とりあえず屈んだりしない方がいいぞ」
「なんで?ボール拾えなくなっちゃうよ?」
「…首元からさ、中が見えんだよ」
「え!?中…っええ!?」


そ、そういうことだったのか…!!気まずい…見せられるようなものでもないのに、そんなものを見てしまった黒羽くんの気持ちを考えるといたたまれない。顔が、というより頭も全身もあつい…恥ずかしい…
いつの間にかボールを拾い終わった黒羽くんが倉庫に行くか、とだけ言って、私が片付けるもののほとんどを持っていって歩き出した。慌てて傍にあったバットを抱え、その後ろについていく。


「ボール置いといたぞ」
「ありがと、バットはここでいいんだよね?」
「おう」


むわっとした空気の倉庫に道具を置く。早くここから消えよう、そしてこの忌まわしきジャージを脱ぎたい。いや、ジャージ忘れた私が全て悪いんだけどね…。
パチン!と突然音がしてそちらを見れば、前髪につけていたピンがなにかの弾みで落ちたのか床に転ばっている。これがないと前髪の寝癖が…よっこいしょとしゃがみ、立とうとした…のだけれど、力が入らない。そして頭がくらくらして…ぼんやりする…


「おいみょうじ!」
「…え?」


私の反応では遅すぎたようだ。声がかかり、そちらを見れば、ダンボールの山がが今にも私に向かって倒れそうになっているじゃあないか……でもまあ下敷きになってもいいか…


「バカ!なんで避けねぇんだよ!」
「な、んで…くろばねくん…?」


ダンボールが崩れ落ちてくるかと思いきやそんなことはなく、でもあつくて苦しくて、目の前に黒羽くんの顔がすごく近くて…な、なんだこれは!?
覆い被さる黒羽くんは心配そうな顔で私を見つめている。ちかい、とても、黒羽くんが近くにいる。私がおかしくなるんじゃないかってくらい側にいて、しかもところどころ体が触れていて、どくどくと血の流れが早い。…かばってくれたのだろうか。そんなことしなくても大丈夫なのに。むしろ黒羽くんが怪我をしちゃうことの方が困るし嫌だ。


「いって…そうだみょうじ!お前怪我してねぇか!」
「私はへいき。黒羽くんは怪我してない?…っん、なんか圧迫すご…」
「俺もこんくらいなんてことねぇよ。あー…ちょっと待て、今立つ」

黒羽くん重いし硬いし、圧迫感とてつもないけど、でももう少しこのままでいたいというのは…無理なんだよね。心臓早いの聞こえてるかな、彼のが聞こえてないんだもん私のだって聞こえていないと信じたい。いろいろ考える私を置いて黒羽くんが体を起こそうとすると、襟首の隙間から鎖骨がのぞいていて、その奥で呼吸と一緒に上下する胸板、そしてさっきも見たお腹も見える…色っぽい…


「みょうじ?」
「え、な、なに?」
「お前平気か?ボケっとしてるし…具合悪いのか?」
「大丈夫だよ…強いていうなら胸が苦しいくらいで…」


ドキドキして、なんかもう頭回らないし…ああ、黒羽くんが白く、かすん…で………







「アレッ!?」


気がついたらベットだった。な、なな、なにこれ!!夢オチ!?…じゃなかった。ジャージ着てるし。視界がそこらじゅう真っ白だし。


「おはようみょうじさん」
「おはようございます…?」
「あなた熱中症で倒れたのよ、それでクラスの男の子が運んできたの」
「えっええ!?」


なんてこった、もしや私はあのまま気を失ったの…?平気と答えたくせに全然平気じゃなかったのか、嘘もいいところである。ハァ〜と大きなため息をつくと先生から一本のスポーツドリンクを手渡される。サービスのいい保健室だなぁ…


「それ、あなたを運んできた男の子が」
「でぇっ!?」
「早く元気になれ、って言ってたわよ」
「くろばねくん…!」


神様、私こんなにいい思いしていいんですか。黒羽くん…もう大好きッ!!
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