諭吉記念企画 | ナノ




お星様にお祈りしたの、魔法が使えるようになりたい…って。







「名字、すまないがちょっといいか」
「え?うん。構わないけど」


帰りの支度をしていると、真田くんが全くすまなそうに見えない声色で私に話しかけてきた。なんだなんだ、服装検査だって引っかかったことないし、変なものを持ち込んだわけでもない。彼に呼び出される理由がわからないのだけれど…
もっもしかして告白とか、そういうのかな…いや、いやいやいや…!それはないよねっ!うん!いやぁでもドキドキしてきたぞ…別に好きとかそういうんじゃないんだけどね?ああ真田くん。一体私になんの用事なんだ…


「単刀直入に言おう。これからお前には魔法少女になってもらう」
「…ハァ?」
「昨晩星に祈っただろう?魔法が使えるようになりたいと。その願いを叶えるのだ、俺と契約して魔法少女となる代わりにな」
「なに、言ってるの…真田くん…?」



真田くんに連れてこられた人気のない教室。どきまきしながら連れてこられたここで、緊張する私をよそに、彼は想像していたものの斜め上どころか、大気圏をぶち破る勢いで頭のおかしなことを言いやがった。た、確かに祈ったりしたけど中学生故の過ちというか!でもなんで真田くんが知ってるの!?実は神の子ならぬ星の子なの!?星の王子様!?


「…名字の考えていることは、きっと全て違うだろう。俺は普通の人間だ。役割を言うのなら仲介役だな」
「なッ…なんで考えてることわかったの…エスパーなの…?」
「顔を見ればわかる。で、どうする?契約するのかしないのか、お前の好きにしろ」
「契約の代わりに魔女退治やらされたりとかゾンビみたいになったりとか…」
「? なにを言っているんだ?魔法少女のやることは主に緑化作業や不法投棄の撤去、防犯パトロールなどだが」
「わあっ予想以上に地味だ!!」


某魔法少女アニメみたいになったらどうしようかと…やることは思ったよりも地味だし、これ私がわざわざ魔法少女になる意味あるの?どう考えてもボランティアサークルのする活動みたいだ。
悩む私に真田くんが小さな星型の瓶を手渡した。手のひらに収まるキラキラと光る小瓶。これは何かと尋ねると幸せが集まる小瓶だと教えてくれる。なんでも、これがいっぱいになると私の願い事をどんなものでもひとつ叶えてくれるらしい。急にファンタジーっぽくなってびっくりしたけれと、でもお約束だし…うん、ちょっといいかも…


「よしっ!契約する!」
「そうか、ならば名字目を瞑れ」
「えっ!?あ、うっうん…!」


契約するって言っちゃったけれど目を瞑るって、もしかして契約にはキスが必要とか、そういう感じだったりするのか…!?ま、まさかファーストキッスがここでなくなるとは思っても見なかったけれど、ええいままよ!目をこれでもかというくらい瞑ると、真田くんが私に近づいてきたのがわかる。そしてほっぺを両方から包み込まれ、こつん、とオデコに何かがぶつかった。そろそろなのかな、どうしよう、私、今更だけど緊張してきたっ…!


「星よ、汝との契約を望む者がここにいる。少女 名を 名前 。星よ、我を仲介し少女にその力を与えよ!!」
「えっ、えっ、えーっ!?!!」


なにこのCCさくらみたいな呪文は!というかき、キスはいいのね!そりゃそうよね!ホッとしたのもつかの間、真田くんが私の名前を呼び目を開けるように促した。そっと瞼を上げると…うわっ真田くん近い!オデコこっつんこしてたのね、そりゃあ近いよ…っていうかそれより


「なんか私も真田くんも体がめっちゃ光ってる!!」
「名字、お前に俺を仲介し星の力を授けた。この光は星の力。今日からお前は魔法少女だ」
「お…おう…」


私、名字名前。中学三年生にして魔法少女になりました。ってアホか。でも本当の話なのだ。







「…真田くん、この変身の仕方なんとかならないの?」
「無理だ。俺が力を仲介しているのだからな」
「だからって一回一回オデコくっつけてぴかぴかするのはちょっとなぁ」


男子と、クラスメイトとこんなことをするのはやっぱり恥ずかしいモノがある。ぶわって光るし。まさにサンシャインの輝き。
魔法少女になってから、私は真田くんと一緒に夜のパトロールをすることになった。…といっても酔っぱらいを魔法でお家に送ってあげて不法投棄された家電を魔法で消したり、なんてことくらいしかやっていないのだけれど。魔法少女になったが、私は真田くんが近くにいないと変身できないし魔法も使えない。このシステムはプリキュアみたいだ。


「変身したあとのこの服もなんだかなぁ」
「確かにパトロールに向いている服だとは思わんが魔法少女というものはそのような格好をしているのだろう?」
「まあ、そうかも…」


ふわりと夜風にスカートが揺れる。魔法少女っぽいフリフリの服は嫌いじゃないけど、私の柄じゃなくて恥ずかしい。空を飛んでパトロールという真田くんの提案で、魔法で姿を消しつつ空中からパトロール。こんな提案をされたときはちょっと驚いたのだけれど、ニコッと笑って他がどんなに嫌でもこの時間は割と好き。胸元で首に吊るしておいた小瓶が月明かりに反射してキラリと光る。中身はまだまだ少ししか溜まっていないけれど、真田くんと一緒に頑張ればいつか溜まるよね。溜まったら真田くんと二人でどんなお願いにするか決めよう。だって二人で頑張っているんだもの。


「そうだ名字、課題は終わらせたのか」
「ここでそういう話はやめよう真田くん!」





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真田がどうして仲介役なのか!小瓶に幸せが溜まりきることはあるのか!星の力を持つ彼らの運命は!?とかそういうことは次回に続く!(大嘘)