林檎と蜂蜜

二日連続で橘家にお邪魔するのもどうかと思うが、先生からも既に帰っていた杏ちゃんからも気にするなと言葉をもらい、借りたエプロンをつけて台所に立っています。今日はカレーだそうです。ちなみに包丁で野菜の皮をむいたら爪がそげて悲鳴をあげていたら先生に笑われてしまった。誰もが通る道、らしい…本当なの…?


「いい匂いですね、この匂いってほんとお腹がすく…」
「そうだな…」
「帰り道とかでこの匂いするとお家に帰りたくなりません?」
「ああ。無性に恋しくなる」


少しいびつながらも油で炒められた野菜たち。懐かしいような切ないような、それでいてお腹の減る匂いが辺りに漂う。このまま肉じゃがでもいいなぁと呟くと、先生は小鍋を取り出して野菜たちを少し、その中へ入れた。


「どうせだしちょっとだけ肉じゃがにするか」
「え!やったあ!」
「人参もじゃがいもも細かいし白滝もないが…」
「いいんですいいんです!」
「すごい食いつきだな、お前」
「だって美味しいじゃないですか!あ、ちっちゃいサイズだからお弁当に入れられますよ!」
「お、いいところに気がつくな。よし。少し持って帰れ」
「わーい!ありがとうございます先生!」


味付けは先生がしてくれるらしい。醤油とみりんの割合が〜と説明してくれるので買っておいたメモに書き取り、頷きながら話を聞く。ああ…醤油の匂いって、素晴らしい…




「味見するか?」
「わっ!しますします!」


小皿を持っては首をひねり水を加えたり塩を少し入れたりと微調整を終えた先生は、持っていた小皿をそのまま差し出し、なんとも心の踊るお誘いをした。料理を作る過程で一番味見が好きだ。理由は言わずもがなである。


「あ…おいしい…これが橘家の家庭の味…」
「大げさだな」
「だって私の家とは肉じゃがはもちろんカレーも味が違うんですよ?そりゃ家の味付けも好きなんですけど先生の味付けも大好きです」
「そりゃ作り手冥利に尽きるってもんだ」


先生の食べてくか?というお誘いに二つ返事で返す。杏ちゃんを呼び、3人で夕飯だ。いただきます、と口に含んだカレーはとろりとしてご飯によく絡まり、あまり好きじゃない人参も味がしみておいしくて。こんなご飯が毎日食べられたらいいのに…杏ちゃんがとてつもなく羨ましくなった。


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