進むためのレッスン



挨拶もそこそこに先生の折角だから卵焼きくらいは作れるようにするか、という提案の元、一緒に卵の割り方(角で割ろうとしたら怒られた)から新鮮さのチェック方法に混ぜ方などなど…先生のお手本を見ながら少しずつ進めていく。卵焼きひとつにこれだけ気をつける点があったのか…と無知さに驚いていると先生が卵液の中に少しだけお酢を入れていく。え?


「えっ卵焼きってお酢入れるんですか?酸っぱくなっちゃいません?」

「ん?ああ。酢を入れると発色が良くなるんだ。熱で味も匂いも飛ぶから気にしなくていいぞ」


先生スゲェ…物知り…まずはシンプルに、ということでお砂糖を入れてかき混ぜて…そしてついにメインの焼きの工程である。先日ぐっちゃぐちゃの見るに堪えない卵焼きを作り上げた私だが果たしてどうなる…







いや、なんとなくそうじゃないかなって予想はしていたけれど…


「スナップをきかせるように!」

「は、はい!」

「返事より手を動かせ手を!」

「ひえええ……」


卵焼き機に流し込まれた卵液を菜箸でどうにかまとめ…ようとするも卵はちぎれていくばかりだ。このパターンは見覚えがある。昨日のひどい有様のお弁当を思い出して申し訳なくなってくる。すみません先生、私また酷いものを錬成しそうです…!


「少しは落ち着け!火を弱くすればすぐには焦げない。フライ返し使ってゆっくりでいいから巻いていけ、ほら、フライ返し」

「は、はい…」


先生からフライ返しを手渡され、ゆっくり巻いていく。ま、巻けてるのこれ…?先生は何も言わないから多分できているんだと思いたいけれどなかなか恐ろしいモノがある。どうにかこうにか破けつつもまとまった卵焼きはあまり綺麗とは言えない形だ。…でも昨日よりましかも…


「よし、そうしたらまだ余りがあるからな。厚くしていくぞ」

「エッ…?」

「ほら俺が流すからお前は手を動かせ。今日は卵パックなくなるまでやるからな」

「エーッ!?」


先生ちょっと待って私まだ心の準備がァー!それに卵のパックって新しいやつでしたよね!?そんなにたくさん卵焼き焼いてどうするんですか!?…なんてことを言えるわけもなく。先生は卵液を容赦なく卵焼き機の中に流し込み、私はひーひー言いながら手を動かし、そうしてスパルタ料理教室は続いていくのであった。



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