「う、うまい…」


さっすが俺たちの橘さん!和食も抜群に美味しかったですけどお菓子も作るの上手なんですね!!なんですかこれ、なんて言う名前のお菓子なんですか、すごいおいしいんですけど、けど、女子として負けてるだろ…

橘さんとお付き合いをしてそれなりに経った。クリスマス、お正月ときて恋人達のイベント!そうバレンタインデーが来たのだ!!彼氏なんて初めてだしもう何もかもが楽しくてキャッキャウフフと橘さんに渡すチョコを作った。…のは良かった。
問題はそう、橘さんだ。
橘さんぜってー流行に疎いと思ったのにどこのどいつの入れ知恵か、逆チョコなんてしてきやがったのだ。いやめちゃくちゃ嬉しいんだけどね?橘さんのチョコ!イエイイエイ!!って思ってたけどね?橘さんのチョコの方がクオリティ高くて美味しいんだよ!なんだよこれ!


「そうか、それならよかった。普段は菓子なんて作らないからな」
「わ、私のために特別ってことですか…!」
「まあそうなるな」
「たっ…たちばなさぁん…!!」


私の考えていることとは真逆に橘さんはただただ素敵でかっこよかった。なんでこの人こんなにイケメンで優しくてオカン属性なの…好き…!


「さて、名前も作ったんだろう?楽しみにしててね!なんて言ったんだからな」
「ぐっ…つくり、ましたけど…」


チクショー!なんでそんなこと覚えてんだよ!!ものすごく嫌そうな顔でチョコを手渡したからか橘さんは「そんなにチョコ食べたいのか?ハハ、また作ってやるよ。だから名前のは俺にくれないか?」なんて言いのけた。そうじゃない、そうじゃないんです橘さん。チョコ作ってくれるの楽しみにしてますけど単に見劣りするチョコを食べて欲しくないだけなんです。ぺりぺり包装をはがして口に入れる橘さんにああ…なんて声が漏れる。神様どうして私に料理スキルを授けてはくれなかったのですか。


「ん、なかなかうまいじゃないか」
「うっ……そだぁ!」
「そんな溜めていうことでもないだろ。お前ちゃんと自分でも食べたのか?」
「食べましたけど…どう考えても橘さんの方がおいしいじゃないですか!これなんていうお菓子なんですか!?めちゃくちゃおいしいですね!?」
「そりゃあ普段から作ってる人間とじゃあ差もある。ちなみにそれはフィナンシェだ」
「うわっ何そのおしゃれ菓子!?というか橘さんフォローしてくれないんですね!!」
「フォローもなにもないからなぁ」
「ひどい!」


なんとも切ない気持ちになっているところで橘さんからそうだ、と提案の声がかけられる。なんですか橘さん。今の私は現実突きつけられてますからね、ちょっとやそっとじゃなびきませんよ。心に木枯らしピューピューですから。


「今度一緒に作ってみるか、チョコ」
「えっ?」
「お前が納得できるくらいまで何回でも付き合うし」
「たったちばなさぁん!!!私一生橘さんについていきます!!!!」
「一生か、そうか…」
「ヘイ兄貴ィ!」
「兄貴はよしてくれ兄貴は」


橘さんにニコニコと返すとちょっと眉毛を下げてから私の大好きな笑顔を見せて頭を撫でてきた。切ない…なんて思ってた気持ちはどこへやら。今はもう橘さんでいっぱいだ。あーもうっ!これだから橘さんは!好き!!

prevnext
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -