∵芽御師とあだ名
→2014/08/02



※NOT沙希



「芽御師…?」

名前を告げるとまるで品定めするみたいに、何度も彼女は僕の名前を反芻する。何だ、なにか僕は変なことを言ってしまったのか。こうやって外に出るのも家族以外と話すのも、ましてや女子と話すなんて久しぶりすぎるから。
そういえば自己紹介だってそうだ。僕が最後にしたのは何年前だ、もしかしたらその数年の間に自己紹介の定義はまるっと変わってしまったのかもしれない。

「芽御師くん」
「な、なに…?」

なっ名前を呼ばれた…しかも、リアルな女子に…どうしようこ、これは緊張する…ッ!かろうじて返した言葉に彼女はんーと、えーっと、と言葉を選んでいるようで、まだ会話が続くことに嬉しさ反面恐ろしさを感じる。ワルドブー曰く僕たちはこれから一週間一緒にいることになるのに、ここで変なことを言ってしまったら…

「珍しい名字だよね、私の住んでたとこじゃ聞いたことないもの」
「うん…よく言われた」
「あ、やっぱり?漢字とか思い浮かばないや」

女子大生だと言っていたけれど、笑い方はあっけらかんとして少し馬鹿っぽい。僕よりもずっと年下みたいな、少女…というよりは子どもみたいな笑い方をする人だ。

「ねえ、めおくんって呼んでもいい?」
「め…え?」
「私ね、人の名前覚えるの得意じゃなくて、いつもあだ名つけて覚えてるの…気に触ったならごめんね」

めおくん。なんだ、そのかわいらしい呼び名は。女子か。いや、女子がつけたのだから、確かにそうなるのかもしれない。そうだ。女子が、しかも、か…可愛いリアルな、女子がだ、僕の目を見て話して…しかもあだ名までつけてくれて……

「あの…」
「え!?あ、い、いいイヤとか!そういうのじゃなくてッ!」
「ほんと!よかったぁ!」
「そっそれならいいんだけど!」

舌がッうまく回らない…!どんどんとテンパる僕をよそに彼女はまた子どもっぽく笑う。ああ…幸せで死ぬのかもしれない…そういえばワルドブーがゲームで死ぬかもって言ってたし…これは本当に死ぬな…


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