∵なるほどくんと朝
→2014/08/02



「なるほどくん。ねえ、そろそろ起きないと、時間、危ないんじゃあないの?」
「…いいんだ、どうせ事務所に人なんか来ないし…」
「そんな投げやりな…」

なるほどくんの朝はいつも憂鬱そうに始まる。私が起こしてもグタグタと御託を並べて眠りにつこうとするのでこっちとしては少し面倒臭いところもあるのだけれど…

「そうだ、ねえ、こうしよう」
「なんだい?」
「なるほどくんはちゃんと事務所に行く、私もちゃんと仕事に行く」
「それで?」
「それで…帰ってきたらご褒美をあげようかな」
「お、いいねぇ」
「ラーメン」
「…それはまた、チープなご褒美だ」
「もっとチープなのでもいいよ」

お金も何もかからない、そう、例えば

「私、とか」
「…何がチープさ、ぼくにとっては最高すぎるご褒美だよ」
「それは嬉しいなあ」
「今日は早く帰らなきゃいけなくなったからね、大急ぎで行かないと」

そこからのなるほどくんは本当に早かった。パパパッとスーツに着替えて鞄を持ち、朝ご飯は食べずに髪型を整え、私が気がつくと既に出かける準備をして玄関に立っているじゃないか。な、なんて現金な…

「ほら早く、一緒に途中まで行こう」
「そりゃあもちろんだけどさぁ…」
「いってきます」
「いってきます」
「いや、そうじゃなくて」
「なに?」

コンコンとパンプスに足を入れて確かめた私の頭を掴んだなるほどくんは、ちゅうと分かり易い音と一緒にくちびるを引っつけて楽しそうに笑った。

「いってきますのチュー」

お約束だしね、なんて後に続けるもんだから苦笑いが溢れるけれど、まあ、こういう朝もたまにはいいかなぁなんて、さ。

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