||| plus alpha お兄ちゃんから兄貴呼びになってもう2年が経つ。どうしてそうしたのか思い出せないけれど何かしらの理由があって私はそうすることにしたのだ。 「うむ、似合っているぞ」 「うるさい、話しかけないでよね兄貴。朝からテンション下げさせないでよ」 チッ!と露骨に舌打ちするとすまなそうにする兄貴に意味もなくイラつく。珍しく朝練がなかったらしい兄貴は脱衣所で忙しく支度する私の制服姿を見てにんまりとしていたが、暫くして眉を下げて私の名前を言った。 「しかしなぜ立海にしなかったんだ、1年だけだが中等部には俺がいるし家からも近いだろう」 「そんなの、あんたがいるからに決まってるじゃん。同じ学校通いたくないし」 立海の制服は嫌いじゃないけれど兄貴と同じというのが嫌で、真田弦一郎の妹というレッテルが嫌で、私はわざわざ家から少し遠い私立を受験したのだ。 ため息をついてスカーフを結ぶと頼りなさげな声で「右に曲がっているぞ」と指摘が入る。 何よ、その態度。 あんたは私の兄貴なんだから、もっと強気でくればいいじゃない。なんでそんなに私に気を使って、私がなにか言う度に申し訳なさそうにするのか理解できない。 スカーフを直して兄貴を睨むとなんでもなさそうに、むしろ嬉しそうに私を褒めた。褒めることでもないのに、私を子供扱いして、チクショウ、ムカつく。 「ジロジロ見ないでよ、変態」 そう吐き捨てて脱衣所を出る。早くしないと電車に遅れてしまう。荷物を取り、玄関の全身鏡で最終確認。まだ制服に着られている感じが否めなくて似合ってるとは言い難いけれど、これが私の精一杯。玄関を開けると風がスカートの裾を揺らした。 「いってきます」 遠くから兄貴の声が聞こえたけれど気がつかないふりをして、駅まで早足で向かった。 Jan 30, 2014 00:27 browser-back please. |