||| plus alpha 私には近所に住むお兄ちゃんがいます。もちろん血のつながっている、というわけではなく、お兄ちゃんのように慕っている、という意味です。昔、お兄ちゃんかお姉ちゃんが欲しかった私。そして弟か妹が欲しかったらしいお兄ちゃん。私達はちょうど良い、win-winな存在なのでした。憧れだったお兄ちゃんができてとても有頂天になっていたのを今でも簡単に思い出せます。 さて、それも私が幼少の時のこと。今の私に憧れはもちろんありますが、それよりも強く、お兄ちゃんを好きだという気持ちが強くなったのです。よくある、少女漫画のパターンです。笑ってしまうほど馬鹿げているのですが、その気持ちに気がついてから私はとりあえず中学生になったのもあり、取っ付きやすいテニスをはじめることにしました。まずは憧れのお兄ちゃんと同じ土俵に立つところから始めようとしたのです。 「テニス、始めたんだな」 「はい!おに…真田先輩のようになりたくて!」 「わざわざ言い直さなくてもいいだろ」 「じゃあ…お兄ちゃん」 「なんだ」 「呼んだだけです」 えへへ、なんて子供っぽく笑うとお兄ちゃんは私の頭を撫でます。子供扱いでもいいのです、いや、そうでない時もありますが触れ合えるだけで十分なのです。お兄ちゃんの後を追うように入った立海、そしてその女子テニス部は過酷なものですが同じ「テニス」という共通点を持っているという決してなくなることのないモチベーションがあるので根性で乗り切っています。 「楽しいか?」 「はい、それはもちろん!」 「球拾いばかりだろう」 「はい、それはもちろん…」 「こっちも一年はそうだからな。どれ、お前にひとつ、いいものをやろう」 いいもの。ピクッと体が反応します。それを見たお兄ちゃんは現金なやつだと呆れたような声でいいますが顔は笑顔のまま。カバンを探っていたお兄ちゃんですが、何かを見つけたのか腕を抜くと、大きな手が私の目の前に差し出されます。 「…テニスボール」 「何個あってもいいからな、練習は怠るな」 「はい!」 このテニスボールがあれば、きっと私は百人力です。嬉しくて、思わずボールを抱きしめた私と大袈裟だと言うお兄ちゃん。知ってますかお兄ちゃん、あなたがくれた物なら全部が私の宝物なんですよ。 Jun 20, 2014 15:20 browser-back please. |