||| plus alpha 「……とりあえず、保健室だよね。私運んでくよ」 「は?先輩何言って、」 真田くんの腕を私の首にかけ、脚と腰に手を回し思い切り力を入れる。要はウエイトリフティングだ。腰から力を入れれば真田くんくらいなら持ち上がる。女子らしからぬ格好をしているけれど、今はそれどころじゃない。 「よいしょっ…と!」 「ヒッ!?」 「じゃっ!わたし、行くから!」 「えっ、ちょ、せんぱ…!?……す、すげぇ…あんな巨体を軽々と……」 結論から言うと真田くんはそこまで重くなかった。腕の中で目を閉じたままの真田くんをちらりと見て、少し心配になる。ちゃんも食べてるのかな、この子。 走って真田くんを揺らしまくるのもどうかと思ったので、できるだけ早足で歩く。彼の足と腕は歩く度にぶらりと揺れている。ごめんね、すぐ保健室まで運ぶからね。所謂お姫様だっこをしているからか私が前に出る度に廊下の生徒たちがはけていく。ふと海を割ったとかいうモーセを思い出した。 「すみません!あけて、あけてくださぁい!!」 両手がふさがり開けられないため保健室前でそう叫ぶと養護教諭が慌ててドアを開けてくれる。そして真田くんと私を二度見三度見したあと、嘘でしょう…?なんて呟いた。確かに真田くんがこうやってぐったりしてるのは嘘みたいだ。 「すみません、あの、彼と私ぶつかっちゃって…それで意識がなくて!」 「えっ!?あ、ああ!そうね、とりあえずベッドに…」 案内されるがまま私は真田くんを運び、真っさらなベッドに寝かせた。氷のうを持ってきた先生が頭に当ててあげて、と手渡す。真田くん。ごめんの、私がもっとちゃんとしていればよかったのに……。 「もっと鍛えなきゃ…」 「あなたはもう十分だと思うわよ」 「そんなことないです…とりあえずベンチプレスとスクワットの量を増やそう…」 「……」 真田くんが目を覚ましたのはそれから数分とのことだ。一部覚えていないところもあるけれど、すっかり仲直り(と言っても私が勝手にそっけなくしていただけなんだけれど)した私達は、一緒に帰りのSHRへ出るため廊下を進んでいく。 「おい、あれ…」 「真田をお姫様だっこした…」 「ありえねぇ……」 そんな周りのヒソヒソとした噂話などしらない私は、真田くんと前のように笑いあっていた。ちなみに次の日から私はアマゾネスと呼ばれるようになった。誰も理由は教えてくれない。 --- フラグがへし折れる Mar 31, 2014 00:17 browser-back please. |