||| plus alpha アイドル戦国時代。私はその真っ只中に立たされていた。…いや、アイドルではなくて、そのアイドルを輝かせるためのプロデューサーとして。 私の所属する385プロダクションはかなり低めの知名度と泣きなくなるような人件費で成り立っている(と言っていいのかわからない)芸能事務所だ。私はそんな385プロの事務員だったが社長の思いつきによりアイドルプロデューサー…になったのだが、あまりにも貧乏だった為マネージャーもしている。ちなみに給料は増えていない。酷だ。 「真田くん次のオーディションはキミにピッタリなの見つけてきた!」 「本当ですか」 「うん!お米のキャラクターガールなんだけど、お願いしたらボーイも可にしてくれたの!」 「米!やはり日本人は米だな」 「うんうん、体張って取ってきた甲斐があるよ!」 彼は私のプロデュースするアイドル、真田弦一郎こと真田くんだ。社長のちょっとアイドルになりそうなのスカウトしてきて、という無茶ぶりに答え、街中で声をかけまくって唯一、私の話を聞いてくれたちょっと怖い見た目によらずいい子だ。「人助けだと思っておねがいします!!アイドルになってください!!」と言う私の悲痛な叫びを聞き、事務所にて社長の説得によりなんとアイドルへの道を歩み始めたアイドルの卵である。ちなみに持ち歌は少し古臭いメロディのラブソングだけ。真田くんとラブソングのギャップがすごい異色のコラボだ。 「よしっ!合格に向けてレッスン頑張ろう!!」 「はい、ご指導宜しくお願いします」 「まあ教えるのは私じゃないんだけどね。トレーナーには連絡してあるからさ、このまんま行くけど平気?」 「大丈夫です。場所はいつものところですか?」 「うんそうだよ。…もしかして走っていくとか言うつもりじゃ」 「勿論そのつもりです」 「あー…やっぱり。どうせ私が車出すんだし乗ってけばいいのに」 「これも鍛錬の一つですので。それでは先に行っています」 一礼し事務所を出ていく真田くん。…きっと次のオーディションに向けて張り切ってるんだろうなぁ。ここのところずっとオーディションに落ちてたし最近やった仕事は近所の洋服店のチラシモデルだったし。壁に額に入れて飾られているそのチラシの中で仏頂面でポーズを決める、我が事務所初のアイドル真田くん。今回のオーディションは興味ある内容っぽいし是非とも合格して欲しい。……事務所のこれからと私のお財布のためにも。 Feb 10, 2014 20:20 browser-back please. |