03


「サファイアは、少女漫画が好きなんだ?」

オダマキ博士が突然本を読み出した娘を心配して、サファイアを病院に連れて行く!と言って聞かなかった日のことを思い出しかけたところで、ふと部屋の隅に積まれた漫画の山が気になった。
体の伸びる船長が率いる海賊団の話だとか、薬で記憶はそのまま体だけ小学生になってしまった高校生探偵の話だとか、彼女が好きそうなものをボクなりに選んで揃えたつもりだった。でも、何故か封を切られているのは少女漫画ばかり。……ひょっとして、海賊は嫌いなのか。

「うん。絵も綺麗で可愛いし……それに、あたしばこういう話 なんだか好きみたいやけ」

そう言えば、すっかりたくましいイメージが定着して忘れていたけれど、この子の中身は女の子 しかもかなりの乙女なのだった。
二人で街に出かける度、可愛らしい服を見かけてはショーウィンドウの前で立ち止まって「べっ別にこんなの着てみたいだなんて、ちっとも思っとらん!」なんてムキになっていたっけ。

「でも、女の子視点のお話ばっかりやね」

サファイアはぱらぱらとページをめくりながら、思い出したようにぽつりとそう呟いた。その目線は相変わらず漫画の中で、

「そりゃそうさ。女の子向けの雑誌に連載してるんだしね」 どうせ話しかけるならボクの顔を見て話してくれたらなぁ……なんて少し不満に思いながら、ボクは腕の中のCOCOに「ねぇ」と同意を求めるように語りかける。当然COCOの言葉なんて分かる訳もないのだけれど、目も合わせてくれようとしない彼女へのささやかな抵抗のつもりだった。

「あたしは男の子視点の話が読みたい。男の子って、何考えとるか分からんから」

「どうして、こっち見て言うかなぁ」

我ながらなんて子供らしい行動なんだろうと心の中で自分に苦笑していたところで、突然立ち上がったサファイアに驚いて声が裏返ってしまう。その情けない声を聞いた彼女は頬を思いきり膨らませて、

「……ルビー、鈍感」


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