01
サファイアが、風邪をひいたらしい。
お見舞いは、「ああキミみたいなの(バカの意)でも風邪ひいたりするんだね。またひとつ賢くなったよ」、といった嫌味か……それとも「他人にうつしたら治るっていうよね。ちょっと試してみよっか?」なんて冗談のプレゼントにしてやろうか。
そんなことを考えながら、ポケギアの番号リストから蒼い宝石の名前を探す。……順番は一番上にしてあるから、探すも何もないのだけれど。
電話のコール音が1つ、2つ。彼女のことだ、まだ電話を取らないのは分かっている。ポケギアを手元に置いていないだなんて……まったく、それじゃあ携帯電話の意味がないだろう。
3つ、4つ、5つ……9つ。いつもならそろそろ「もしもし」という声が返ってくる頃合いなのに、受話器の向こうからは相変わらず規則正しいベルの音しか聞こえてこない。
(ただいま電話に出ることができません。ピーッという音の後に、お名前とご用件を……)
「あ、もしもし。ボクだよ、ルビーです」
キミみたいなのでも風邪ひくんだねとか、他人にうつしたら治るって言うから試してみようかとか、色々言ってやろうかと思ったけど気が変わったよ。
「今からそっちに向かうから、覚悟するように」