練習オフ日。
しかも2日間。
1日目の夜に、暇だし飯でも食いに行かないか、とクロを誘ってみた。

クロは、行くなら前にドリさんに連れて行ってもらった美味い焼き鳥屋に行きたいと言う。
家から最寄りの駅前にあるその店の串焼きは、俺も美味いと思ってたし、久々に行くか、と2人してその店に行く事にした。







店内のテーブル席は、週末の夕方だからか、仕事帰りの会社員や学生の飲み会で一杯だった。迷わず2人でカウンターに座る。
カウンターに立つバイトらしい女の子に、とりあえずオーダーを告げる。

「生、2つ」
「豚バラと鳥、つくねも。あ、鳥は塩でな。それぞれ2人前」
クロはみごとに肉類ばかりを頼んでいる。

「お前…ちょっとはバランス考えろよ」

次の日に練習がないからと肉を多めに食うのは、選手として少しどうかと思う。注意するとクロは口を尖らせて反論してきた。

「うっせ。豚バラの間にネギがあんだろ」
「…あれは野菜にカウントされるのか…?」

あんな申し訳程度の野菜じゃ栄養にもならないと思うんだが。
視線を感じてカウンター内を見ると、なかなか決まらないオーダーにバイトの女の子が少し困った顔をしていた。
やばいと思い、苦笑いして残りを言う。

「…すみません、じゃことベーコンの和風サラダ追加。とりあえず以上で」
「なっ」
「あ、はいかしこまりました」

女の子は奥の厨房へオーダーを伝えに行った。

クロはサラダを追加されたことにむっとしているらしい。黙っているけどそんな雰囲気が隣からふつふつと伝わってくる。

「ベーコンが入ってるところに俺の優しさを感じろよ」
意地悪くにやりと笑ってみる。
「んな優しさいらねえ」
おお。更に不機嫌になってきた。
「じゃあ食わなきゃいいだろ」
「…出されたもんは食う」
「なんだよそれ」

結局食うのかと笑ったら、うっせおまえはもう黙ってろ!と怒鳴られた。
よくわからないやつだ、相変わらず。

そんなやりとりがうるさかったのか、近くのテーブル席に座った女子大生くらいの子達からちょっと睨まれた。…怖い。


「スギさんクロさーん!ちぃーす!!」


同時に突然、入口付近から物凄い大音量で聞き覚えのある声に呼ばれた。
なんだと思って振り返ると、世良だ。
俺たちを見て騒ぐ世良の横には、早く席に着かせようと世良の肩を揺するドリさんも居た。
2人が店内の客の注目の的になっていて、なんかすごく、ドリさんが居たたまれない。
ああ…また女子大生がこっち見てる…店から苦情とか来なきゃいいけど。

それにしてもドリさんと世良が一緒なのは珍しいな。

「げぇ。ドリさんはともかく何で世良が居んだよ」
座る席が見当たらず結局カウンターへ座ろうと近づく二人を見ながら、クロが嫌そうに溜め息をついた。

結局、カウンター席が俺達の両脇しか空いていなかったので、何故かドリさん、俺、クロ、世良という変な並びになって座る俺達。

「ぎゃははは!つか、スギさんとクロさんて、普通に二人で呑みに来たりすんスか!すげ!」
世良は相変わらずいつものテンションだ。

「五月蝿ぇ世良!なんだよ、なんかワリィか?」

釣られてクロの怒鳴りもさらに大きくなる。
こうなるともう何言っても無駄だ。好きにやらせておこう。後でまたうるさい。

「だって、俺がドリさんに奢ってもらいに来た店(ここ)で会うとかウケるんスけど!ぎゃははは!最初店入った時、マジびびったし!なんか見慣れたハゲ頭見えたし!」

「〜〜〜っ」

我慢してるんだろうが今にも世良に掴みかかりそうだ。
世良、頼むからあんまりクロをいじらないでくれ。店内が大変なことになる。








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