エリートだか何だか知らねえけど、あいつは最初から気に食わねえ。
都営施設の改装に業界でも有名な建築士を使うのは、どうでも好きにやってくれて構わねぇが、使われる身にもなってもっとマシな人間を雇って貰いてえもんだ。
「そこ、指示と違うんですが」
一階ロビーの内壁のクロスを貼り替えようと脚立に座り、古くなったクロスを剥がしていると、後ろから低い声がかかった。
振り返るまでもなく声の主がわかる。さも高そうなスーツを着た建築士がさっきまで施設の関係者と打ち合わせしながら腹の立つくらい淡々と現場の人間に指示をして回ってやがった。
まるで現場の人間を只の道具みてえに。

「…これであってるス。指示あったんで」

顔を見ずに本当のことをボソボソと返した。

「ロビーの内壁は後にしてくれと言ったはずですけど」

奴の革靴が音を立て、脚立に近づく。
…脚立に座る俺の真横に付かれ、身長が無駄にある奴に、腰あたりから見上げられた。
ちくしょう、見上げられてんのに何故か矢鱈と威圧感を感じる。またそれが腹立つ。

「…うるせえよ、現場の人間に指示されたからやってんだ!
お前の指示でやってるわけじゃねえんだよ、スーツ野郎」

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