手触りがそれはもう嫌になるくらいリアルだった。もちもちした肌や濡れているのにひどく熱い中が締めつけて息が荒くなって、汗で前髪が張りついた額も赤くなった頬も扇情的な眼差しもいつかの記憶のままで一つも褪せていないようだった。根元まで深く飲み込む欲に殺された二人の夢をみたんだ。
「……最悪」
ズボンが気色悪くなって起きた。足の付け根がいやに冷たく感じて少し動いてみたら案の定粘っこくなっていた。頭がさあっと冷えて泣きたくなる。面倒になってもうどうでもよくなってきた。せっかくの休日も台無しだ。もう一度枕にダイブするとすぐそばで携帯が光った。電話だ。
「…もしもし」 「井浦おはよう」 「うおーおは、おはよう」 「部屋入るね」 「え?」
こんこんとドアをノックする音がしてすぐにドアからみょうじさんの顔が覗いた。非常にまずい事態だ。俺は着替えなくてはいけないし部屋がにおったらいけないのでリセッシュをかける必要もあるし顔洗ったり歯を磨いたりしなきゃいけない。とりあえず彼女を部屋にあげるわけにはいかないのだ。しかし同時に布団から下半身を出せないで彼女を追い出す事など不可能だ。
「あ、不法侵入じゃないよ。一応基子ちゃんにあげてもらったから」 「俺は部屋に入っていいって言ってない!」 「なによ、下着一枚だめにしただけじゃん」 「は…」 「寝言全部聞こえてた」
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