時々、瞬間的にNの存在感が欲しくなる事がある。Nの部屋は好きだ。周りの人間は不気味だとか何とか言ったけど、私にはどうにも深く眠れそうな気がして落ち着いた。だからといって彼に似ているところがあるとは思いもしないし求めない。要するにやはり、Nなんだ。
「N、どうも私は体が重たい」 「それはいけないね。風邪かな」 「きみが加えている重力だと思う」 「なんと。物理学的かつ哲学的」 「ちっとも」
ぴこぴこソファの上でうつ伏せになってゲームをしている私の上にあの図体の大きい緑色が乗っかった状態である。彼は一度くっつくとなかなか離れないからスライムみたいだと私は思っている。いくらNが細くて背のわりに体重が軽いと言えども私よりは値が大きいからやっぱり重い。肩も凝ってきたし何よりソファに食い込む顎が痛い。
「それ何のゲーム?」 「シューティングゲーム」 「おもしろい?」 「まあまあ」 「ボクとお遊びするのとどっちがおもしろい?」
うなじに吸いつかれながら尋ねられた。手持ちのライフがすべて消えてゲームオーバーの単語が悲しげなBGMと共に現れるが、感嘆する余裕もなく固まる。Nが察してくすくす笑いながらゲーム機を側の机の上に置いた。
「おんなじようなもんだよ」 「え、それは酷いな」
仰向けになって向かい合う。意外と距離があいていたのでNの首に腕を回してその体は足で挟んで思いきり抱きしめた。苦しめたいのに彼は非情なまでに私の愛情表現を快く受け入れてしまう。これじゃあまるで私が悪いみたいだ。耳にキスをして本気になる前に逃げたらたぶん五分五分だ。
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