一方的に誘われたデートはあんまり乗り気じゃなかった。顔も全然知らない奴だったし、下の名前はさっき言ってたけどぼそぼそ言ってて聞こえなかったし実際名字もちょっと曖昧だ。遠くからアイスを両手に走ってくる姿が魅力的でガン見してしまったのは不覚だった。胸でかいなこいつ。
「ごめん、バニラしかなかったんだけど…」 「ああ、別に」 「よかった。はいどうぞ」
ゆるふわカールの毛先が胸の頂点に乗っかって前を向いている。ゆったりめに見えるトップスは動きに合わせて腰のラインを見せつけてみたり、膝丈のスカートも前かがみになった時はギリギリセーフといった程度でどうもいやらしい。ずっと自慰止まりだった俺としてはやれるんなら好都合なんだが、こうも純粋そうな奴は期待するだけ無駄だろう。ため息が出た。 だから帰り道の途中で薄暗い路地裏に引き込まれた時は驚いたってもんじゃなかった。
「…何、して」 「シルバー、私あなたの事が好きです。本当に好きです。でもあなたが私を好きじゃないのは百も承知しています」
彼女の右手が俺のズボンのベルトに手をかける。
「やるだけなら大した事ないでしょ?」
なぞるようなまさぐるような手つきがもどかしい。触りたかったあの膨らみには息を飲むより早く手が届きそうだ。今日ははぶんなくて正解だったかもしれない。服の中に手を入れると久しぶりの女の体があった。
「普通友達からお願いしますって言うんじゃないのかよ」 「…ある意味、友達?」 「よく言う」 「あっ、キスはだめ」 「何で」 「恋人としかしたくない」
とんだわがまま野郎だ。
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